機能獲得研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/13 07:02 UTC 版)
機能獲得研究(GoF研究またはGoFR)とは、遺伝子産物の生物学的機能を強化するように生物の遺伝子を改変する医学研究である。これには、病原性、伝染性、または宿主範囲(微生物が感染できる宿主の種類)の改変が含まれる場合がある。この研究は、新興感染症の予測精度向上、ワクチンおよび治療薬の開発のための標的を明らかにすることを目的としている。例えば、B型インフルエンザウイルスはヒトとゼニガタアザラシにのみ感染する。制御された実験室環境でインフルエンザBがウサギに感染できるようにする変異を導入することは、ウイルスが以前はその機能を持っていなかったため、機能獲得実験とみなされる。この種の実験は、ウイルスのゲノムのどの部分が感染可能な種に対応するかを明らかにするのに役立ち、この機能を阻害する抗ウイルス薬の開発を可能にする可能性がある。
ウイルス学において、機能獲得研究は通常、現在および将来のパンデミックをより深く理解する目的で用いられている。ワクチン開発において、機能獲得研究は、ウイルスに先手を打って、ウイルスが出現する前にワクチンや治療薬を開発可能にすることを期待して行われる。「機能獲得」という用語は、より狭義に「パンデミックを引き起こす可能性のある病原体がより速く複製したり、ヒトやその他の近縁哺乳類により多くの害を及ぼしたりすることを可能にする研究」を指すために適用されることがある。
機能獲得研究の一部(特に特定の病原体病原体を扱う研究)は、固有のバイオセーフティおよびバイオセキュリティリスクを伴うため、デュアルユース性が懸念される研究(DURC)とも呼ばれる。こうしたリスクを軽減しつつ、研究のメリットを確保するため、各国政府はDURC実験を、機関(いわゆる機関内DURC委員会)や政府機関(NIHの組換えDNA諮問委員会など)による追加的な監督の下で規制することを義務付けている。同様のアプローチは、欧州連合のデュアルユース調整グループ(DUCG)にも見られる。
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