権力の48法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/28 04:58 UTC 版)
権力の48法則 The 48 Laws of Power |
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著者 | ロバート・グリーン | |
発行日 | 1998年(バイキング・プレス、ハードカバー) 2007年(HighBridge Audio、CD) |
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ジャンル | 自己啓発 | |
国 | ![]() |
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言語 | 英語 | |
形態 | ノンフィクション書籍、著作物 | |
ページ数 | 480 | |
次作 | 成功者たちの誘惑術 | |
コード | ISBN 0670881465(HC) ISBN 978-1598870923(CD) OCLC 39733201 |
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『権力の48法則』(原題: 英語: The 48 Laws of Power)は、1998年に出版されたアメリカの作家ロバート・グリーンによる自己啓発書である[1]。
本書はニューヨーク・タイムズのベストセラーとなり[2][3]、アメリカ国内で130万部以上の売上を記録した[4]。
背景
グリーンは、ハリウッドでライターとして働く中で、現代の権力層が歴史上の権力者と共通の特徴を持つと考え、『権力の48法則』のアイデアを構想し始めた[5]。
1995年、グリーンは芸術・メディアスクールであるファブリカでライターとして勤務し、ブックパッケージャーのユースト・エルファーズと出会った[6][7]。
グリーンはエルファーズに権力に関する本の企画を提案し、6か月後、エルファーズはグリーンに原案の執筆を依頼した[6]。
グリーンは、ハリウッドでライターとして働いていた際に、現代の権力者たちが歴史上の権力者と共通の特徴を持っていると考え、『権力の48法則』の基本的な概念を構想した[5]。1995年、グリーンは芸術・メディア学校であるFabricaでライターとして働いており、書籍パッケージャーのユースト・エルファース(Joost Elffers)と出会った[8][7]。グリーンはエルファースに権力についての本の企画を提案し、6か月後にエルファースから正式な企画書を執筆するよう依頼された[8]。
グリーンは当時の仕事に満足していなかったものの、安定していたため、正式な書籍企画を執筆することはリスクが高いと考えていた[9]。しかしその頃、グリーンは最も愛読するユリウス・カエサルの伝記を再読しており、カエサルがルビコン川を渡り、ポンペイウスと戦う決断をしたことに着想を得た[9]。この決断がカエサルの内戦を引き起こしたのである[9]。グリーンはこの着想を基に企画書を執筆し、これが後に『権力の48法則』となった[9]。彼はこの瞬間を自身の人生の転機であると後に語っている[9]。
評価
人気
『権力の48法則』はアメリカ国内で130万部以上を売り上げ、24か国語に翻訳されている[6]。Fast Companyは本書を「メガ・カルト・クラシック」と評し、ロサンゼルス・タイムズはグリーンを「ヒップホップ界、ハリウッドのエリート、そして囚人たちのカルト的英雄」にしたと述べている[6][10]。
本書はアメリカの刑務所の図書館で頻繁に求められていると報告されている[5][11]。ラッパーの50セントは本書に「すぐに共感した」と述べ、グリーンに共同執筆を提案し、後に『The 50th Law』として実現した。この作品もニューヨーク・タイムズのベストセラーとなった[12]。また、バスタ・ライムスやデリウス・ジャクソンは映画プロデューサーとのトラブル対処に本書を活用した[7]。『権力の48法則』は、UGK、ジェイ・Z(「Primetime」)、カニエ・ウェスト、セントラル・シー、MF Doom、ドレイクなどの楽曲にも言及されている[13][14][15][16]。
アメリカン・アパレルの創設者であり元CEOのドブ・チャーニーは、取締役会の会議中に本書の法則を頻繁に引用し、友人や従業員に本を配布していた。また、グリーンを取締役に任命したが、2014年に同社から解雇された[6][17][18]。また、本書の著者によれば、キューバの元国家元首フィデル・カストロも本書を読んだとされる[6]。
本書はアメリカの複数の刑務所で禁止されている[19]。
『権力の48法則』は、50セント、ジェイ・Z、バスタ・ライムス、マイケル・ジャクソン(本の余白に書き込みをしていた[20])、コートニー・ラブ(薬物使用容疑で法廷に向かう途中に本を持っている姿が撮影された[21])、そしてウィル・スミスなどに引用されたり購入されたりしている[5][22][23][24]。
本書が「倫理に反する書籍」としての評判を得たことに対し、グリーン自身は「露骨に操作的だといえる法則はせいぜい4つか5つしかない」と述べ、「残りの44の法則はまったく操作的ではない」と主張している。さらに、「人々は最も極端な章を選んで批判する」と反論している[25]。
批評と学術的評価
キャロル・ケネディは『Director』誌において、「グリーンの『法則』のいくつかは矛盾しているように思える」と述べ、本書を「単調で説教的である」と評している[26]。
『ニューズウィーク』誌のジェリー・アドラーは、本書における法則の矛盾点を列挙し、「グリーンは意図していないだろうが、本書は新約聖書以来、謙虚さと無名であることの最良の擁護論の一つとなっている」と述べている[27]。
『Kirkus Reviews』は、本書がグリーンの世界観を支持する証拠を一切提示しておらず、各法則が互いに矛盾していることを指摘し、「単なるナンセンスである」と評している[28]。
『権力の48法則』は、ミルサップス大学およびラマポ大学の講義で教材として使用された[29][30]。
また、スタンフォード大学のジェフリー・フェファーは、グリーンの法則が個別の事例に基づいており、実証的な研究に裏付けられていないと指摘している[5]。
脚注
- ^ Greene, Robert (2000). The 48 Laws of Power. New York: Penguin Books. pp. 452. ISBN 0140280197
- ^ “The New York Times Business Best Sellers” (英語). The New York Times. (1998年11月8日). ISSN 0362-4331 2025年3月25日閲覧。
- ^ Green, Hardy. “Best Selling List”. BusinessWeek
- ^ “American Apparel's in-house guru shows a lighter side” (英語). ロサンゼルス・タイムズ (2011年8月30日). 2024年10月25日閲覧。
- ^ a b c d e “How to master 'The 48 Laws of Power'” (英語). CNN.com (2010年3月15日). 2025年3月25日閲覧。
- ^ a b c d e f Chang, Andrea (2011年8月30日). “American Apparel's in-house guru shows a lighter side” (英語). Los Angeles Times. 2025年3月25日閲覧。
- ^ a b c Paumgarten, Nick (2006年10月29日). “Fresh Prince” (英語). The New Yorker. ISSN 0028-792X 2025年3月25日閲覧。
- ^ a b Chang, Andrea (2011年8月30日). “American Apparel's in-house guru shows a lighter side” (英語). Los Angeles Times. 2025年3月25日閲覧。
- ^ a b c d e “Robert Greene On Power Ambition Glory” (英語). Forbes (2009年6月16日). 2025年3月25日閲覧。
- ^ Johnson, Lynn. The 50 Cent Bible. Fast Company. 2009年9月10日.
- ^ Garner, Dwight (2010年10月19日). “The Readers Behind Bars Put Books to Many Uses” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2025年3月25日閲覧。
- ^ Burkeman, Oliver (2009年9月4日). “When the gangsta rapper met the self-help guru”. The Guardian
- ^ JAY-Z & Kanye West – Primetime 2025年3月25日閲覧。
- ^ UGK (7 August 2007). Living This Life (music video). 2021年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ.
- ^ Central Cee – Ungrateful 2022年7月4日閲覧。
- ^ Drake – What I'm Thinkin' Right Now 2025年3月25日閲覧。
- ^ Li, Shan (2014年12月16日). “American Apparel fires founder Dov Charney after internal investigation” (英語). ロサンゼルス・タイムズ. 2023年5月4日閲覧。
- ^ Robertson, Michelle (2017年1月14日). “American Apparel to close all of its stores” (英語). SFGATE. 2023年5月4日閲覧。
- ^ zero (2018年6月25日). “Books Banned in U.S. Prisons Featured at Minneapolis Art Festival” (英語). UNICORN RIOT. 2025年3月25日閲覧。
- ^ “Bonhams : Joseph Millighan Ambetsa : an annotated copy of the book 'The 48 Laws Of Power' by Robert Greene”. www.bonhams.com. 2024年10月25日閲覧。
- ^ “Singer Love to face drugs trial”. BBC News. (2004年4月16日) 2024年10月25日閲覧。
- ^ Lee, Chris (2006年7月12日). “Laws for an Outlaw Culture”. Los Angeles Times
- ^ Paumgarten, Nick (2006年11月6日). “Fresh Prince: Hip-hop's Machiavelli”. The New Yorker
- ^ Tice, Carol (2006年11月1日). “All's Fair?” (英語). Entrepreneur. 2025年3月25日閲覧。
- ^ The 48 Laws: Who's Being Manipulative? I Robert Greene (英語). www.youtube.comより2024年10月25日閲覧.
- ^ Kennedy, Carol (1999), The 48 Laws of Power, Director Publications 2024年10月25日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Adler, Jerry (1998). “The Prince Wants a Word With You”. Newsweek 132 (16). オリジナルの2014-01-12時点におけるアーカイブ。 2024年10月25日閲覧。.
- ^ “The 48 Laws of Power”. Kirkus Reviews. 2024年10月25日閲覧。
- ^ “48 Laws of Power Syllabus”. Millsaps College. 2011年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月25日閲覧。
- ^ “The 48 Laws of Power Syllabus”. Ramapo College. 2020年8月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月25日閲覧。
関連項目
外部リンク
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