小豆澤裕子

現代俳句データベース(人名)

小豆澤裕子

小豆澤裕子の俳句

つごもりの男に呪文かけに行く

のどけしや首つままれて醤油瓶

また人に生まれ変はるや枯野人

ゆつくりと湯呑砕ける白露かな

よく振つて花菜にかける愛国心

オリオンの腋下の杜や春浅し

ペンギンのおじぎ今日より春と呼ぶ

七草や丸めて捨てるサロンパス

似顔絵の鼻が違つてゐる朧

何処からでも行ける広間や鹿の声

動物に例へればヒト春だから

夏近し右に曲がれば遠回り

夜学校板書の文字の右下がり

専守防衛陽炎が足障り

情愛に糊しろ五ミリ松納

愛してと言はんがばかりしやぼん玉

数へ日の白紙折れば立ちにけり

春風や思ふ存分引き籠もる

月を見ず月に濡れをる観世音

有りつ丈注いで残る西日かな

橋涼みヤクルトのおばさんが通る

水着より雫となりし海零れ

淡雪と業務日誌に書き添へる

無花果甘しぐうの音も出ぬ時も

甚平に酔ひ潰れるといふ手あり

糠床に捜しあぐねる茄子かな

紙雛の留守居してゐる詰所かな

臍辺りから脱皮する朧かな

良く眠るための体操蚯蚓鳴く

葉桜や水は蔭りへ行きたがり

蝶離り現のものとなる少女

隙間より雛の右目の見えてをり

鵜篝の零れし水面闇に帰す

鶴来るライブカメラに雨の痕

黒南風を辻にほつぽらかして来る