女性の休日
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 17:38 UTC 版)
女性の休日 Kvennafrídagurinn |
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日時 | 1975年10月24日 |
場所 | アイスランド |
目的 | 男女の賃金差や女性の政治進出の遅れに対する抗議 |
手段 | ストライキ |
結果 | 性別による賃金格差を禁止する法律が成立 |
女性の休日(じょせいのきゅうじつ、アイスランド語: Kvennafrídagurinn)は、1975年10月24日にアイスランドで発生した女性によるストライキ。男女の賃金差や女性の政治進出の遅れに対する抗議として行われ、アイスランドの女性人口の9割以上が仕事や家事を放棄して参加したと言われている。これによってアイスランドでは1976年に性別による賃金格差を禁止する法律が成立した。
背景
アイスランドの女性は1915年に参政権を獲得した[1]。しかし、その後の60年間で国会議員に就任した女性は9人に留まっており、1975年時点で女性の国会議員は総議席の5%にあたる3人であった[1]。また、当時の男女の賃金差は40%以上だった[2]。
1960年代からの欧米の女性解放運動はアイスランドにも大きな影響を及ぼした。その影響を受けて、デンマークのレッド・ストッキング運動にならって、アイスランドに急進的な女性解放運動団体The Red Stockingsが結成された。1975年、国際連合は同年を国際女性年に定めることを発表した[2]。これを受け、様々な女性団体、労働組合・社会運動団体の女性メンバー等が集まって会議が開催された。そこでThe Red Stockingsによってストライキが提案された[1][注 1]。しかし、ストライキが正当性のない山猫ストとして扱われる懸念があり、これによってストライキに参加した女性が解雇されることがあったことから、ストライキは「女性の休日」という呼称に変更された[2]。これによってストライキは全国的な支持と労働組合からの支援を得るようになった[1]。たちまち50くらいの団体から賛同が集まった。さらにストライキの計画は女性運動団体が呼びかけ、メディアや口コミを通じてアイスランド中に広く伝えられた[4]。
経過
ストライキは1975年10月24日に行われた[5]。アイスランド中の都市や町で大規模集会やデモが行われ[2]、女性の9割以上が仕事と家事を放棄したと言われている[5]。首都であるレイキャヴィークのデモには女性人口の20%にあたる25,000人の女性が参加した[2][注 2]。デモの集会では演説や歌唱、討論などが行われた[1]。海外からも多数の報道陣が取材に来た。
ストライキによって銀行や工場は休業した[1]。休刊した新聞社も出たが、当時同国最大であった日刊紙モルグン・ブラディスでは前日夜に従業員を出勤させてスト当日の紙面を準備することで対処した。これには、デモ集会の様子をスト翌日の第一面で写真付きで報じるという条件で、夜勤をして紙面を準備するという取引が成立したという噂もある。[要出典]航空機は欠便、航行船舶からも女性従業員らの参加が相次いだ。多くの参加女性が家事もストの対象とし、さらに学校や保育園も休校したため父親は子どもを職場に連れていかざるを得ず、簡単に料理できて子どもに人気の食材であるソーセージがアイスランド中の商店で売り切れになったと言われている[1][6]。
影響
ストライキを受け、1976年には性別による賃金格差を違法とする法律が成立した[2]。1980年11月にはヴィグディス・フィンボガドゥティルがアイスランドで初めての女性大統領に就任した[1]。彼女はヨーロッパで初めての女性の国家元首であり、世界で初めて民主的に選出された女性の国家元首でもあった[1]。ヴィグディスは、このストライキがなかったら自身は大統領にはなっていなかっただろうと述べている[1]。また、ストライキはアイスランド国外の女性運動にも影響を与えた[2]。1985年にはストライキの10周年を記念して、2度目のストライキが行われた。ヴィグディス大統領も、この日は登庁しなかった[7]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j Kirstie Brewer (2015年10月23日). “The day Iceland's women went on strike”. BBC News. 2023年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Iceland Magazine Staff (2018年10月24日). “The 1975 Women's Strike: When 90% of Icelandic women went on strike to protest gender inequality”. Iceland Magazine. 2023年8月23日閲覧。
- ^ a b “Icelandic Women's Strike”. Future Learn. 2023年8月23日閲覧。
- ^ 坪池 順 (2021年3月8日). “国中の女性がストライキを起こした日。1975年、アイスランドの「女性の休日」”. Huffpost. 2023年8月23日閲覧。
- ^ a b “世界で一番ジェンダー平等の国=アイスランドのお話”. NHK (2022年6月7日). 2023年8月23日閲覧。
- ^ “The day the women went on strike”. The Guardian (2005年10月18日). 2023年8月23日閲覧。
- ^ 『アイスランド 目で見る世界の国々』42頁(国土社)ISBN 4-337-26043-9
関連項目
関連サイト
- 在アイスランド日本国大使館公式ページ令和5年12月8日「大使室より(女性のストライキ)」[1]
- 女性の休日のページへのリンク