因子 (代数幾何学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/21 02:30 UTC 版)
因子(いんし; divisor)とは、代数幾何学や複素幾何学において、代数多様体(または複素解析空間)の余次元1の部分多様体の形式的有限和のことをいう。因子は、代数多様体や解析空間上の有理関数あるいは有理型関数の極や零点の分布を表すために用いられる(概説参照)。線形同値な因子の空間である線形系を考えることは、射影空間への有理写像を考えることと1対1に対応しているので、代数多様体(または複素解析空間)の代数幾何的な性質・情報を取り出すときに欠かせない概念である。
概説
因子が代数幾何(あるいは複素幾何)で演じる役割については、代数曲線(あるいは、コンパクトなリーマン面)の場合を見ればおおよそ理解する事が出来る。C を代数関数 f(z1 , z2) = 0 から定まるコンパクトリーマン面(あるいは、f(z1 , z2) = 0 で定まる平面曲線の特異点解消)とするとき、C 上の有理型関数全体(あるいは、代数関数全体)M(C) は、1変数有理関数体 K = C(z1) の f による拡大 K[z2] / (f) と同型である事がわかる。特に、C 上の有理型関数全体 M(C) は C 上のベクトル空間として無限次元である。M(C) は体論的に明確な形で既述される体であるとはいえ、コンパクトリーマン面の幾何的な性質を調べるには不十分である。
例えば、ひとつの重要な問題としては、任意にコンパクトリーマン面 C を与えたときに、M(C) に複素定数でない元が含まれるか、すなわち C 上に自明でない有理型関数が存在するか、という問題がある(コンパクトリーマン面の代数性、GAGA参照)。この問題は、より強く、C 上のある 1点 P に極を許し、その他の点では正則な有理型関数が存在できるか、という問題と同値である。C 上 P のみに極を持つ有理型関数の全体を R(P) とすると、これは M(C) の部分環になるが、結論から言うとこれも C 上有限次元にはならない。ところが、Pに高々 n 位の極をもち、他の点では正則な有理型関数全体を L(nP) で表すと
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