分岐図 (力学系)とは? わかりやすく解説

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分岐図 (力学系)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/23 07:31 UTC 版)

力学系理論における分岐図(ぶんきず、英語:bifurcation diagram)とは、系のパラメータ変化によって起こる分岐の様相をプロットする図である。

ある力学系のパラメータ変化にともない、系の振る舞いが質的に変化することを分岐と呼ぶ[1]。分岐図は、このような分岐の様相を把握するのに有用な図である[2]

数学的には、パラメータと不変集合の組全体を描いたものが分岐図といえる[3]。1状態変数-1パラメータの分岐図では、横軸にパラメータを取り、縦軸に状態変数を取り、固定点あるいは周期点のグラフを図示する[4]。安定な固定点には実線を、不安定な固定点には破線を用い、それぞれを区別する[5]。分岐図中には、状態空間が進む方向を示す矢印を記入することもある[6]

エノン写像のような2パラメータの系では、横軸と縦軸にそれぞれのパラメータを割り当て、系の振る舞いごとに分岐図平面を色分けして図示する[7]

数値実験的に書かれた近似的な分岐図は、軌道図(英語:orbit diagram)とも呼ばれる[8](軌道図と同じものを単に分岐図とよぶこともある[9])。軌道図では、横軸にパラメータを取るのは分岐図と同じだが、縦軸には写像の反復による漸近的な軌道をプロットする[10]ロジスティック写像の軌道図は、非線形ダイナミクスの象徴とも言えるほどよく知られている[11]

軌道図の場合、具体的には次のようにプロットを作成する[11]。パラメータ a、状態変数 x のある写像を fa と記すとする。まず a をある数値に固定して、fa の反復を例えば600回行う。その内の最初の300回の結果は、過渡的な振る舞いを示しているものとして捨て去り、後の300回の結果を残す。そして、残した300個の x の数値を、固定した a に対してプロットする。a の数値を少し変えて上記を再度行う。これを繰り返すことで軌道図が出来上がる。

軌道図を描くときは、写像の反復をするときの初期値 x0 の選び方が重要となる[12]。軌道図で近似的に描かれるのは、x0 についての ω-極限集合 ω (x0) である[8]。系が複数のアトラクターを持っていたとしても、上手く初期値を取らないと一つのアトラクターしか軌道図で捉えられないこともある[12]。どのような初期値の決め方がよいかは、具体的には個別に試行錯誤せざるを得ない[12]

出典

  1. ^ 小室 2005, p. 13.
  2. ^ デバニー 2007, p. 64.
  3. ^ 桑村 2015, p. 111.
  4. ^ Devaney 2003, p. 72.
  5. ^ Strogatz 2015, p. 51.
  6. ^ Strogatz 2015, p. 52.
  7. ^ 小室 2005, pp. 128–129.
  8. ^ a b 瀬野 2016, p. 56.
  9. ^ 小室 2005, pp. 113–114.
  10. ^ デバニー 2007, p. 86.
  11. ^ a b Strogatz 2015, p. 389.
  12. ^ a b c 小室 2005, p. 115.

参照文献




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