ワン・バトル・アフター・アナザー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/16 11:06 UTC 版)
| ワン・バトル・アフター・アナザー | |
|---|---|
| One Battle After Another | |
| 監督 | ポール・トーマス・アンダーソン |
| 脚本 | ポール・トーマス・アンダーソン |
| 原作 | 『ヴァインランド』(トマス・ピンチョン) |
| 製作 |
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| 出演者 |
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| 音楽 | ジョニー・グリーンウッド |
| 製作会社 |
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| 配給 | |
| 公開 | |
| 上映時間 | 162分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 英語 |
| 製作費 | $115,000,000–$140,000,000[1][2] |
| 興行収入 | |
『ワン・バトル・アフター・アナザー』(One Battle After Another)は、2025年のアメリカ合衆国のアクションスリラー映画。監督・製作・脚本はポール・トーマス・アンダーソン、出演はレオナルド・ディカプリオ、レジーナ・ホール、ショーン・ペン、アラナ・ハイム、テヤナ・テイラー、ウッド・ハリス、ベニチオ・デル・トロ、チェイス・インフィニティ[4]。
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズの配給で2025年9月26日に米国で公開された[5]。
本作の最後では、2024年に死去したアダム・ソムナーに捧げられている。
ストーリー
カリフォルニアの移民収容所から移民を救出する極左革命グループ「フレンチ75」のメンバーである「ゲットー」ことパット・カルフーン(レオナルド・ディカプリオ)とパーフィディア・ビバリーヒルズ(テヤナ・テイラー)は、作戦中に収容所の指揮官スティーヴン・ロックジョー警部(ショーン・ペン)を屈辱的に出し抜く。ロックジョーはパーフィディアに異常な性的執着を抱くようになる。パットとパーフィディアは恋人となり、フレンチ75は政治家事務所、銀行、電力網への攻撃を繰り返す。ある爆弾設置の現場でパーフィディアを捕らえたロックジョーは、モーテルでの性的関係を条件にパーフィディアを解放する。
パーフィディアは娘シャーリーンを出産するが、革命活動を優先し、パットと娘を捨てる。銀行強盗の失敗で警備員を射殺したパーフィディアは逮捕され、ロックジョーの提案でフレンチ75の仲間を密告。証人保護プログラムに入り、ロックジョーは情報を基にメンバーを次々と射殺または逃亡に追い込む。パットは娘シャーリーンを連れ、それぞれボブ・ファーガソンとウィラ・ファーガソンとして身を隠す。パーフィディアはロックジョーの監視を逃れ、メキシコへ逃亡する。
16年後、聖域都市バクタン・クロスで暮らすボブ(パット)は薬物中毒とパラノイアに苛まれ、自立したティーンエイジャーに成長したウィラ(シャーリーン、演:チェイス・インフィニティ)を過保護に守って二人で暮らしている。
一方、ロックジョーは反移民政策を通して警視[6]に昇進し、白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」に入会する。黒人女性であるパーフィディアとの過去の関係を隠し、ウィラが実子である証拠を探すため、先住民の賞金稼ぎ・アヴァンティQ(エリック・シュヴァイク)を雇い、ボブの同志ハワード・サマーヴィル(ポール・グリムスタッド)を捕らえるが、これがフレンチ75の残党に警報を発する。
ロックジョーは移民と麻薬の取締作戦を装い、軍をバクタン・クロスに派遣する。フレンチ75のメンバー・デアンドラ(レジーナ・ホール)が学校のダンスパーティー襲撃前にウィラを救出する。薬物で朦朧とするボブは寝室の隠しトンネルを使い辛うじて自宅を脱出するが、フレンチ75のホットラインのパスワードを忘れ助けを得られない。ウィラの空手師範セルジオ・セント・カルロス(ベニチオ・デル・トロ)に助けを求め、不法移民を隠しトンネルで避難させるが、屋根伝いの逃亡中に転落し逮捕される。
デアンドラはウィラを革命尼僧の修道院に連れ、母パーフィディアの裏切りの真実を明かす。結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」は会合を開き、ロックジョーの過去の関係の証拠を発見し、メンバーの1人ティム・スミス(ジョン・フーゲナッカー)に抹殺を命じる。
ロックジョーは修道院を襲撃し、ウィラのDNAを採取し自身のものと照合させ、自分が実父であることを確認する。セルジオはボブの脱獄を手配し修道院へ運ぶが、警察の追跡をかわすため車から投げ出す。ボブは車を盗み修道院に到着するが、セルジオのライフルでロックジョーを撃つも当たらない。ロックジョーはアヴァンティにウィラの処分を命じる。
その後スミスがロックジョーを撃ち、車をクラッシュさせる。スミスはロックジョーが死亡したと判断して去るが、ロックジョーは重傷を負いながらも生き延びる。アヴァンティはウィラを解放し、ロックジョーの部下に撃たれ死亡する。ウィラはアヴァンティの車を走らせ、スミスを待ち伏せる。革命の合言葉を知らないのを確認してスミスを射殺し、追いついてきたボブとついに再会する。
重傷から生還したロックジョーは結社に迎え入れられたかに見えたが、有毒ガスによって殺され、その後焼却される。帰宅した後、ボブはウィラにパーフィディアからの希望の手紙を渡す。もはや娘の将来を案じることのないボブは、オークランドの抗議運動に参加しに行くウィラを快く見送る。
キャスト
主要人物
- “ゲットー”・パット・カルフーン / “ロケット・マン” / ボブ・ファーガソン - レオナルド・ディカプリオ
- 極左革命グループ「フレンチ75」の元メンバー。パーフィリアとの娘ウィラを守ろうとするが、アルコールと薬物依存で精神的にも脆くなった父親。組織の崩壊後、名前を「ボブ・ファーガソン」に変えてウィラを守る隠遁生活を送る。父親として過保護になり、携帯電話を持たせない、友人との交流を制限するなどウィラの行動を厳しく制限。ロックジョーに娘が狙われる事態になると、再び革命の世界への助けを求め、センセイやデアンドラらと協力して救出に奔走する。パスワードを忘れていたり、薬でボーっとしていたりと、人間的な弱さも強く描写される。
- 「フレンチ75」を追う軍人。フレンチ75の活動を粛清するため追跡・逮捕・殺害を指示する。パーフィリアと関係を持ったこと、また混血の娘ウィラが白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」の規則に反する存在であるとして、娘の存在を消そうと画策する。物語中盤・終盤でウィラのDNAテストを強制するなど狂気じみた行動を取り、自らのイデオロギーの矛盾にも苦しむ。最後はクラブに迎えられるかに見えたが、クラブ側に“処分”される形で、ガスで殺されて焼却される。
- ウィラ・ファーガソン / シャーリーン - チェイス・インフィニティ
- パットとパーフィディアの娘。16歳になり、父親が作った“危険から守るためのルール”の中で成長しながら、自分自身を確立しようとする。学校のダンスに行きたいなど普通のティーンエージャーとしての願望を持つ一方で、父の過去・革命の遺産に巻き込まれていく。ロックジョーの襲撃でデアンドラに救われ、修道院に匿われる。その中で母パーフィリアの裏切りなどの真実を知り、自分のアイデンティティと向き合う。終盤ではアバンティーQの車と銃を使って逃走し、クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブの工作員ティムを迎え撃つなど、自立した行動をする。父との再会の際にも、ただ“救われる”だけでなく、自分の父親かを試すパスワードを要求してボブを試すなど、自分の立場をはっきりさせる。
- セルヒオ・セント・カルロス(センセイ)[注釈 2] - ベニチオ・デル・トロ
- ウィラに空手を教える先生であり、移民コミュニティの支援者。フレンチ75の元構成員でもあり、ボブとウィラを守るため静かなリーダーシップを発揮する人物。緊張した状況でも冷静さを保ち、ボブに逃亡ルートや隠れ場所を提供し、移民たちの避難も手配する。ボブが捕まったときには脱走を助けたり、ウィラの匿われ先に向かう車を運転したりするなど、“裏方組織”として機能する。
- パーフィディア・ビバリーヒルズ - テヤナ・テイラー
- 「フレンチ75」のメンバーであり、ボブの同志であり恋人。移民施設の解放作戦など実行部隊として果敢に行動する。ロックジョーを性的・政治的・心理的に挑発することもあり、それがロックジョーの執着と復讐心を煽る。ウィラを産むが、母親として家庭に留まることに耐えられず、革命の道を選び続ける。銀行強盗作戦での失敗で逮捕され、ロックジョーに証人として情報を与えることで刑務所行きを回避するが、その後メキシコへ逃亡。物語終盤には娘への手紙を残すなど、かつての行動を反省し、自分なりの希望を見せる。
フレンチ75
- デアンドラ - レジーナ・ホール
- 「フレンチ75」のメンバー。ボブとパーフィリアの古くからの同志であり、ウィラを守ろうとする革命活動の中で情に厚い“母性的/支え役”的な存在として機能する。ウィラが学校のダンスパーティで襲撃を受ける時、ウィラを救出し修道院へ送り届ける。自ら前線に立つわけではないが、リスクを取って他の革命メンバーとの情報共有や保護活動、避難計画を実行する。
- メイ・ウエスト - アラナ・ハイム
- 「フレンチ75」のメンバー。
- ラレド - ウッド・ハリス
- 「フレンチ75」のメンバー。
- ジャングル・プッシー - シェイナ・マクヘイル
- 「フレンチ75」のメンバー。
- コムラッド・ジョシュ - ダン・カリトン
- 「フレンチ75」のメンバー
- タリーランド - ディジョン・ドゥエナス
- 「フレンチ75」のメンバー。
- ハワード・サマーヴィル / “ビリー・ゴート” / “グリンゴ・コヨーテ” - ポール・グリムスタッド
- 「フレンチ75」のメンバー。ロックジョーによって捕らえられ情報を引き出されるなど、革命組織への負荷となる出来事に巻き込まれる。彼が捕獲されたことでボブや他のメンバーへ危険信号が発せられる。
クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ[注釈 3]
- ヴァージル・スロックモートン - トニー・ゴールドウィン
- 白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」のメンバー。
- サンディ・アーヴァイン - ジム・ダウニー
- 白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」のメンバー。
- ロイ・ムーア - ケヴィン・タイ
- 白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」のメンバー。
- ビル・デズモンド - D・W・モフェット
- 白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」のメンバー。
その他
- ティム・スミス - ジョン・フーゲナッカー
- 白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」に暗殺者として雇われる。ロックジョーの秘密の露見を防ぐために動き、修道院襲撃や追跡戦でウィラを追い詰める。「面倒な存在」となったロックジョーも撃つよう命じられ、ショットガンで ロックジョーの顔面を撃ち、車をクラッシュさせる。その後、車を飛ばしてウィラを追いかけるカーチェイスの中で、ウィラの策略により車をクラッシュさせられ、その後ウィラに撃たれて死亡する。
- アヴァンティQ - エリック・シュヴァイク
- 娘を“処分”する任務を持っている。しかし、ウィラの人間性や状況に触れて心が揺れ、最終的には命を賭してウィラを守る方向に動く。敵対者でありながら、救済の要素を持つ複雑なキャラクター。彼の犠牲がウィラの逃避を可能にする重要な転換点となる。
- ダンヴァース - ジェームズ・レターマン
- スティーブンの副官。
- ミニー - スターレッタ・デュポア
- パーフィディアの祖母。
- 1776・ジェームズ - ジム・ビーバース
- グリーティング・コード - ジェナ・マローン(声)
製作
2023年6月、ポール・トーマス・アンダーソンの新作映画の配給権をワーナー・ブラザース・ピクチャーズが獲得した。当初、ホアキン・フェニックス、ヴィゴ・モーテンセン、レジーナ・ホールの出演が噂されていた[7]。2024年1月、レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、レジーナ・ホールの出演が決定した[8]。2024年2月、アラナ・ハイム、テヤナ・テイラー、ウッド・ハリス、シェイナ・マクヘイル、チェイス・インフィニティがキャストに加わった[9]。ディカプリオの出演料は2000万ドルとされる[10]。
撮影は、『BCプロジェクト』というワーキングタイトルの下、2024年1月22日までにカリフォルニア州で開始された[11][12][13]。ハンボルト郡全域、ユーレカ、アーケータ、カッテン、トリニダードで11日間撮影された[14]。2月3日、製作チームはサクラメントに移り、サクラメント郡庁舎とサクラメント郡裁判所で撮影が行われた[15]。カリフォルニア州アラメダ郡のバークレーでは、撮影のためにホームレステントが撤去され、物議を醸した[16]。2024年6月には、テキサス州エルパソでもロケ撮影が行われた[17]。本作の撮影には、ビスタビジョンカメラおよび35ミリフィルムが使用された[18]。
ジョニー・グリーンウッドが作曲を務めた。長編映画でアンダーソンとタッグを組むのは、本作で6度目となった[19]。
2024年2月、アメリカのエンターテインメント専門誌であるバラエティは、製作予算を1億1500万ドルと報じた[1]。同年8月、ウォール・ストリート・ジャーナルが、予算は「1億4000万ドル以上」であるとした上で、アンダーソン監督の最高興行収入映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の興行収入はわずか7600万ドルだったが、「ワーナー幹部らはディカプリオの興行成績が本作の予算を正当化すると述べている」と報じた[2]。また、アンダーソンが以前にトーマス・ピンチョンの『LAヴァイス』を映画化していること挙げ、ピンチョンの『ヴァインランド』からいくらかのインスピレーションを受けているという噂も流れた[20][21]。本作が『ヴァインランド』にゆるやかに基づいていることは後の試写で確認された[22]。
日本時間の2025年3月21日に初めての映像となる「予告編の予告編」が公開された。
公開
当初、米国での公開日は2025年8月8日の予定だったが、製作・配給のワーナー・ブラザーズは公開計画を変更、公開日は9月26日になった[23]。アンダーソンの映画としては初のIMAX公開となる[24]。また、ビスタビジョンで撮影された本作は、一部劇場ではIMAX史上初となる全編1.43:1の拡張アスペクト比で上映されることも決定した[25]。
評価
本作は批評家から激賞されており、アクションの迫力とテーマの深みを兼ね備えたポール・トーマス・アンダーソンの最高傑作の一つとして評価されている。俳優陣の演技、特にディカプリオ、インフィニティ、ペン、テイラーは高く評価され、映画全体としてエンターテイメント性と社会性を高く認められている。批評集積サイトRotten Tomatoesでは、401人の批評家のレビューのうち95%が肯定的な評価を下している。同サイトの評論家総評は、「息を呑むようなアクションシーン満載の壮大なスクリューボール・アドベンチャー『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品の中で最もエンターテイメント性に富み、同時に最もテーマ性豊かな作品の一つである」となっている[26]。 Metacriticは、 63人の評価に基づき、100点満点中95点という「普遍的な称賛」の評価を与えている[27]。CinemaScoreによる観客投票では、A+からFの評価の平均で「A」を得た[28]。
RogerEbert.comのブライアン・タレリコは 「ウェザー・アンダーグラウンドの実話や映画における反乱の描写など、幅広い影響を遊び心たっぷりに織り交ぜた、時代を超えた抵抗の物語である。同時に、混沌とした機械に巻き込まれた人間たちを描いた、驚くほど推進力があり、楽しく、そして最終的には感動的な作品でもある」と評した[29]。 「ザ・ニューヨーカー」のジャスティン・チャンはこの映画を「父と娘の壮大な物語であり、非常に個人的な感情がほとばしる。ボブとウィラが共演するシーンは片手で数えられるほどだが、二人の繋がり――保護欲、苛立ち、そして激しく無条件の愛が渦巻く――が、この映画とその激しく渦巻く部分を一つに結びつけている」と評した[30]。シカゴ・トリビューンのケイティ・ウォルシュはこの映画を「アメリカの歴史におけるこの特別な瞬間に対する痛烈な告発」と呼び、「アンダーソン監督は、この物語の広範で陰謀的な側面と、物語の核心である親密な父娘の物語とのバランスをとっている」と評した[31]。
ニューヨーク・タイムズ紙のマノーラ・ダージスは、本作を「善と悪、暴力と権力、奪うことのできない権利と不正に対する戦いを描いたカーニバル風の叙事詩であり、ラブストーリーでもある。過去と現在の失敗を語りながらも、未来への希望を主張している」と評した[32]。 ハリウッド・レポーター紙のリチャード・ローソンは「激しい映画であり、非常に魅力的で説得力のある論争」であり、「アンダーソンはこれまでにないアクションとサスペンスの才能を示している。『ワン・バトル・アフター・アナザー』は本質的にはスリラーだが、国家の崩壊と救済の可能性についての壮大なアイデアで満ち溢れている」と評した[33]。フィルム・スレットのアレックス・サヴェリエフはレビューの冒頭で、この映画は「35mmビスタビジョンの体験を体中の細胞で完全に吸収するためには、可能な限り最大のスクリーンで観る必要がある。登場人物、アクションシーン、タイムリーな感情表現、静かな瞬間まで、すべてが素晴らしい」と書いている[34]。
ピーター・ブラッドショーはガーディアン紙に寄稿し、本作に5つ星を与えたうえで「今やお馴染みのアンダーソン=ピンチョン的なカウンターカルチャーと反革命の思想を巧みに表現したもの」だと熱烈に称賛した。またジョニー・グリーンウッドによる音楽を称賛し、「父子関係危機の三角関係は、アメリカのるつぼの夢をめぐる所有権争いを象徴しているのではないか?」と考察した[35]。
キャストの演技は高く評価された。バラエティ誌のオーウェン・グレイバーマンは「アンダーソンは、ディカプリオを自由にさせる要素がコメディにあることを知っている。彼に、信仰を失って混乱した放蕩なマリファナ中毒者のボブを演じさせることで、ディカプリオに人間味を与え、素晴らしい演技を引き出している」と評した[36]。 RogerEbert.comのタレリコは、ディカプリオの演技は「注意深く調整されている」と感じながらも、ショーン・ペンの演技を「ここ数年で最高の出来」と評し、「筋肉を緊張させ、歯を食いしばり、セリフを唸り声で言いながらも、真実と戯画の間の針の穴を縫うように縫っている」と評した[29]。アトランティック誌のデイビッド・シムズは、「ペンは冷酷な悪役を鮮やかに演じ、3度目のオスカー受賞にもなりそうな演技を見せている。ファシスト特有の間抜けさを恐れずに切り抜けている。ディカプリオはボブを道化師ではなく優しい男として演じている。彼は長年の反撃の努力ではなく、世界の容赦なさに疲れ果てた、疲れ果てたアンチヒーローなのだ」と評した[37]。インディーワイヤー誌のデイビッド・エーリッヒは、「磁力のように落ち着き払った新人であり、一躍映画スターとなったチェイス・インフィニティの演技は、奇妙な一種の自尊心を呼び起こす」と称賛した。また、テイラーとペンの演技を特に称賛し、前者を「革命的な熱意に満ちた爆発的な演技」、後者を「キャリア最高の演技」と評した[38]。
The Wrapのウィリアム・ビビアーニは、それほど熱心ではなく、プロットが散漫で焦点が定まらず、長すぎる、そして映画のテーマが浅薄だと評し、「映画の現実世界の類似点を実際に探求するよりも、安っぽい皮肉を言うことに興味を持っている」と書いた[39]。ウォール・ストリート・ジャーナルのカイル・スミスも同様に、本作を「壮大で大胆だ。トーン、スタイル、テーマが散漫で、あまりにも多くの出来事が起こっているため、一度見ただけではすべてを理解するのはほとんど不可能だ。傑作か寄せ集めかは議論の余地があるだろう。到達点は明らかだが、把握は少し不安定だ」と述べている[40]。
脚注
注釈
出典
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外部リンク
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