メガキャスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/24 21:26 UTC 版)
メガキャストとは、型締め力の大きなダイカストマシン(ギガプレス)を使って、自動車の金属製部品を成形する技術および製造した製品、部品。2010年代にアメリカ合衆国の新興自動車メーカーテスラが開発した。2023年には、トヨタ自動車が同技術を発展させたギガキャストを発表したことから、日本国内では両者が混用されている。
歴史
2010年代、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者は、電気自動車テスラ・モデル3のアンダーボディーの複雑な造り方を問題視。「玩具のクルマのように」もっと簡素に造れないかと考えて、大きなダイカストマシンで成形する発想を思いついた。この方法を実現するためにイタリアのイドラ社が、この構想を実現する6000tfのダイカストマシン(ギガプレス)を開発・製造してテスラに提供。テスラは、テスラ・モデルYのリアアンダーボディー、フロントアンダーボディーをギガプレスにより製造し、モデル3では171点もあった部品点数をわずか2点に減らすことに成功した[1]。
発展
2023年、トヨタはギガキャストを発表する中で、プレス部品数十点をアルミダイキャストで一体化することで部品点数を大幅に削減できること。また、組み立て中の車両が自走するラインでコンベヤーや自動搬送車を不要もしくは縮小できることで工場内のレイアウト変更の自由度を格段に向上できること。さらに、これらの要素技術の採用や工場設計へのデジタル技術の導入で、量産車の生産準備期間・生産工程・工場投資などを従来の1/2にすることを可能にすることを説明した[2]。
課題
衝突安全性
複数の部品で構成されていた部分を1つの鋳造物に置き換えるため、衝突安全基準を確保するための新たな部品設計技術が必要となる。メガキャストで製造する部品自体の剛性は確保できるものの、従来、自動車の衝突時に非常に多数の部品同士が変形、歪みを生じさせながら衝撃を吸収していたところを、一つの部品の各部を座屈させながら衝撃を吸収させることを検討しなければならないため、新たな知識や経験を必要とする[3]。
設備や部品の適正化
本田技研は、大型ダイカストマシンによる製造の優位性を認めつつも消費電力の少なさ、設備の大きさ、運搬や修理の容易さなどのポイントをあげ、単に部品の規模を大きくするだけではなく、最適な規模での生産性向上を狙う必要があるとし、2024年の時点では、あえてメガキャストの範囲にとどめていることを説明している[4]。
脚注
- ^ “EV製造で注目の「ギガキャスト」、大物部品を一発成形も利点は条件次第”. 日経X-TECH (2024年1月26日). 2025年4月24日閲覧。
- ^ “トヨタが発表した新技術、全固体電池やギガキャストよりも注目したこと”. 日経X-TECH (2023年6月27日). 2025年4月24日閲覧。
- ^ “テスラやレクサスに使われている「ギガキャスト」がなぜいま話題なの?”. ベストカー (2025年4月24日). 2025年4月24日閲覧。
- ^ “トヨタやテスラの「ギガキャスト」にホンダの「メガキャスト」ってなに? いま知っておくべき電気自動車の製造方法”. EV TIMES (2025年3月22日). 2025年4月24日閲覧。
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