ノミナサクラとは? わかりやすく解説

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ノミナ・サクラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 14:59 UTC 版)

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ノミナ・サクララテン語: nomina sacra ノーミナ・サクラ、単数形 nomen sacrum ノーメン・サクルム)は、神聖名を意味するラテン語で、ギリシャ語ラテン語コプト語の早期の聖典写本において、いくつかの頻出する神の名や称号を省略して書く伝統を指して用いられる。ブルース・メッツガーの著書『Manuscripts of the Greek Bible』(ギリシャ語聖書の写本) には、ギリシャ語パピルスから15のノミナ・サクラを羅列している。ギリシャ語で「神、主、イエス、キリスト、子、精霊、ダビデ、十字架、母、父、イスラエル、救い主、人、エルサレム、天国」にあたる語である。「母」を意味するノミナ・サクラは西暦4世紀になるまで出現しなかったが[1]、他のすべてのノミナ・サクラは西暦1-3世紀のギリシャ語写本に見えている。省略形はオーバーラインによって示される。

このノミナ・サクラが、単に手間を節約するために行ったものなのか、それともオーバーラインを付した語は実際に神聖な意味を持っていたのかについては、議論がある[2]

西方キリスト教の IHS または JHS(iota-eta-sigma)クリストグラム

西暦1世紀の頃(正確な日付は不明)、ノミナ・サクラはキリスト教の刻文でギリシャ文字を並べた形に短縮表記されるようになった。イエス(Ἰησοῦς)は IH (イオタ・エータ)、IC (イオタ・シグマ)、IHC (イオタ・エータ・シグマ)、キリスト(Χριστός) は XC (カイ・シグマ)、XP (カイ・ロー)、XPC (カイ・ロー・シグマ) と書かれた。ここで C はギリシャ文字の三日月形のシグマである。シグマのかわりに同音のラテン文字である S を使って IHS または XPS のように書くこともあった[3]

この伝統は古代ヌビア語や教会スラブ語の写本にも見られる。ティトロを参照。

ギリシャ文字のノミナ・サクラの一覧

意味 ギリシャ語 主格形(…が) 属格形(…の)
Θεός ΘΣ ΘΥ
Κύριος ΚΣ ΚΥ
イエス Ἰησοῦς ΙΣ ΙΥ
キリスト/メシア Χριστός ΧΣ ΧΥ
Υἱός ΥΣ ΥΥ
精霊/霊 Πνεῦμα ΠΝΑ ΠΝΣ
ダビデ Δαυὶδ ΔΑΔ
十字架 Σταυρός ΣΤΣ ΣΤΥ
Μήτηρ ΜΗΡ ΜΗΣ
神の母 Θεοτόκος ΘΚΣ ΘΚΥ
Πατήρ ΠΗΡ ΠΡΣ
イスラエル Ἰσραήλ ΙΗΛ
救い主 Σωτήρ ΣΗΡ ΣΡΣ
Ἄνθρωπος ΑΝΟΣ ΑΝΟΥ
エルサレム Ἱερουσαλήμ ΙΛΗΜ
天国/天 Οὐρανός ΟΥΝΟΣ ΟΥΝΟΥ

ノミナ・サクラを含むギリシャ語新約聖書写本 (100 AD - 300 AD)[1]

ギリシャ語写本 写本の年代 使われたノミナ・サクラ
ウィキメディア・コモンズには、ノミナ・サクラに関連するカテゴリがあります。
  • Bruce M. Metzger (1981). Manuscripts of the Greek Bible 
  • Philip Comfort and David Barett (1999). Text of the Earliest New Testament Greek Manuscripts 
  • A.H.R.E. Paap (1959). “Nomina Sacra in the Greek Papyri of the First Five Centuries”. Papyrologica Lugduno-Batava VIII (Leiden). 
  • Philip Comfort (2005). Encountering the Manuscripts: An Introduction to New Testament Paleography and Textual Criticism. Broadman & Holman Publishers. pp. 199–253 
  • Larry W. Hurtado (2006). The Earliest Christian Artifacts: Manuscripts and Christian Origins. Cambridge. pp. 95–134 
  • Don C. Barker (2007). “"P.Lond.Lit. 207 and the origin of the nomina sacra: a tentative proposal"”. Studia Humaniora Tartuensia 8.A.2: 1–14. 



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