CAS (カイガラムシ)とは? わかりやすく解説

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CAS (カイガラムシ)

(ソテツシロカイガラムシ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/21 01:02 UTC 版)

ソテツシロカイガラムシ
ソテツシロカイガラムシ Aulacaspis yasumatsui
CASの食害により枯死したソテツ群落
奄美大島(龍郷町) 2024年11月3日
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: カメムシ目 Hemiptera
上科 : カイガラムシ上科 Coccoidea
: マルカイガラムシ科 Diaspididae
: シロカイガラムシ族 Diaspidini
: シロマルカイガラムシ属 Aulacaspis
: ソテツシロカイガラムシ A. yasumatsui
学名
Aulacaspis yasumatsui Takagi, 1977[1]
和名
ソテツシロカイガラムシ[2]
英名
Cycad aulacaspis scale[3]

CAS(キャス)ことソテツシロカイガラムシ(学名:Aulacaspis yasumatsui)は、カメムシ目マルカイガラムシ科に属する外来カイガラムシ。英名Cycad aulacaspis scaleの頭文字から通称CAS(キャス)と呼ばれていたが[4]、2024年にソテツシロカイガラムシの和名が提唱された[2][5]。日本では2022年に奄美大島で定着が確認された[6]。原産地はタイなど東南アジア。外来種として台湾、ハワイ、グアム、アメリカ大陸等に分布し、効果的な防除方法が確立されておらず、侵入先では自生あるいは植栽されたソテツに大きな被害を与えている。

2006年の時広の警告的報告[5]以後、日本では侵入の報告事例は無かった。日本での定着は、2022年より奄美大島の一部群生地の集団枯死が認められていたが[7][8][9][10] [信頼性要検証]、鹿児島県の奄美大島にて2022年11月22日に初確認[6]以後、2023年11月までに奄美大島の5市町村すべてで被害が確認されたほか、沖縄県でも確認された[11]。奄美大島には台湾から侵入したと推測されている[12]

形態・生態

1977年に高木貞夫英語版により記載された[1]ソテツ類全属全種を害するが、特にソテツ属Cycas)への害が著しい[3]。またCycas属内であっても種によってCASに対する抵抗性に差があるとされている。[13] メス成虫はソテツに固着し、自ら分泌した長さ3mmほどの円形から洋ナシ形をした白く薄い殻で被われ、体長1mmほどの卵型で橙色の虫本体が透けて見える。オスの殻はより小型で長さ0.5-0.6mmほど形も細長い。オスの成虫は一対の翅を持ち、餌を摂らずにメスを探し交尾して死ぬ[14][15]。殻は虫の死後もソテツに固着して残り、擦っても高圧洗浄機で洗い流そうとしてもきれいに落とすことはできない。ソテツの葉だけでなく地中60cmまでの根にも寄生することが知られており、通常の農薬散布では駆除しきれない。原産地においては天敵や在来ソテツ種の持つ抵抗性により大発生が抑制されていると思われるが、侵入先ではいまのところそのような強力な天敵がおらず、寄生したソテツの大多数を枯死させてしまう[16]。-6℃で4時間の環境下でも生存する[17]

脚注

  1. ^ a b Takagi, S. (1977). “A new species of Aulacaspis associated with a cycad in Thailand (Homoptera: Coccoidea)”. Insecta Matsumaruana New series 11: 63–72. 
  2. ^ a b 川口エリ子・米森正悟・坂巻祥孝・高木貞夫 2024 奄美大島でみられたソテツシロカイガラムシ(新称)(半翅目:マルカイガラムシ科)の同定とソテツの被害発生状況. 樹木医学研究 28(1):3.
  3. ^ a b Miller, Douglass R.; Davidson, John A. (2005). Armored Scale Insect Pests of Trees and Shrubs (Hemiptera : Diaspididae). Cornell University Press. pp. 93–95. ISBN 0-8014-4279-6. https://books.google.com/books?id=PhgyeCnpklMC&pg=PA93 
  4. ^ 森林技術総合センター 2022 ソテツを加害するカイガラムシ Aulacaspis yasumatsui の 国内初確認について(報告) https://www.pref.kagoshima.jp/ad07/sangyo-rodo/rinsui/shinrin/hogo/documents/107624_20230821151435-1.pdf
  5. ^ a b 時広五朗 2006 台湾産ソテツ苗木から発見されたソテツシロカイガラムシ(仮称)について 九州植物防疫(604): 3.
  6. ^ a b 鹿児島県”ソテツを加害するカイガラムシについて”(https://www.pref.kagoshima.jp/ad07/sangyo-rodo/rinsui/shinrin/hogo/cycas_kaigaramusi.html )
  7. ^ 森林技術 2023年3月10日発行 報告 20 鹿児島県奄美大島における外来カイガラムシによるソテツの被害と今後へ向けての提言 高梨裕行
  8. ^ Instagram”. www.instagram.com. 2024年12月4日閲覧。
  9. ^ Instagram”. www.instagram.com. 2024年12月18日閲覧。
  10. ^ Instagram”. www.instagram.com. 2024年12月18日閲覧。
  11. ^ 沖縄・国頭村ソテツCAS被害 (奄美新聞 2023年3月20日 https://amamishimbun.co.jp/2023/03/20/42915/ )
  12. ^ Takagi, S. 2023. Outbreak of Aulacaspis yasumatsui in Japan (Sternorrhyncha: Coccoidea: Diaspididae). Insecta Matsumurana New Series 79: 81-84.
  13. ^ Handbook of cycad cultivation and landscaping spreadsheet (volume 2, online edition, July 2018) http://www.cycadgroup.org/wp-content/uploads/2018/07/LANDSCAPING-GUIDE-July2018.xlsx
  14. ^ Pest Alert-Cycad Aulacaspis Scale. https://www.fs.usda.gov/Internet/FSE_DOCUMENTS/stelprdb5437895.pdf
  15. ^ Takagi, Sadao and De Faveri, Stefano 2009. Notes on scale insects of Aulacaspis associated with mangroves and cycads (Sternorrhyncha: Coccoidea: Diaspididae. Insecta matsumurana. New series 65: 101-129.
  16. ^ Cave, R. D., A. Moore, and M. Wright. 2022. Biological control of the cycad aulacaspis scale, Aulacaspis yasumatsui, pp. 189–203. In: Van Driesche, R.G., R. L. Winston, T. M. Perring, and V. M. Lopez (eds.). Contributions of Classical Biological Control to the U.S. Food Security, Forestry, and Biodiversity.FHAAST-2019-05. USDA Forest Service, Morgantown, West Virginia, USA. https://bugwoodcloud.org/resource/files/25341.pdf
  17. ^ EDWIN R. DUKE AND ALFREDO B. LORENZO (2003). “SURVIVAL OF THE CYCAD AULACASPIS SCALE IN NORTHERN FLORIDA DURING SUB-FREEZING WEATHER”. Proc. Fla. State Hort. Soc 116: 345-347. https://journals.flvc.org/fshs/article/download/86577/83493/0. 



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