8x22mm南部弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/10 08:17 UTC 版)
性能
弾丸の初活量は約280ジュールと比較的低く、サイズが一回り小さいアメリカの.380ACP弾に相当する。現代に至るまで使用されている有名軍用カートリッジ(例えば9x19mmパラベラム弾や7.62x25mmトカレフ弾)と比較すると扱いやすい代わりに威力が劣っている。
南部式大型自動拳銃から発射した場合、初速315 m/s、最大射程は約2,500 m、そのうち有効射程は500 mである。射程50 mでの半数必中界は上下22.2 cm、左右20.2 cm、射程100 mでの半数必中界は上下44.3 m、左右40.4 m、射程500 mでの半数必中界は上下221.5 cm、左右202.1 cmであった。また、距離10 m、50 m、100 mでの侵徹量を、新聞紙、杉板、砂、鉄板でそれぞれ検査した。鉄板に対しては全ての距離で弾丸が粉砕され、効果はなかった。距離10 mでは新聞紙130 mm、杉板160 mm、砂280 mmを侵徹した。距離50 mでは、新聞紙105 mm、杉板140 mm、砂250 mmを侵徹した。距離100 mでは、新聞紙80 mm、杉板115 mm、砂220 mmを侵徹した[1]。
形状に起因する問題
8x22mm南部弾は同時期の類似口径の弾薬と比較して装薬量が低い割に、薬莢形状が小銃弾などに類似したボトルネック型となっている。その為、拳銃側の作動機構もショートリコイルなどの、薬室とスライド(遊底)を確実に閉鎖し、発射圧力が外部に漏出する事を防ぐロッキングブロックを有する構造に限定される事にもなってしまった[4]。
同時期の同クラスの拳銃は円筒型の薬莢でストレートブローバックなどの簡素な作動機構とする事で、構造の単純化や小型化を実現していたが、閉鎖機構の実装を前提とする8x22mm南部弾は、採用拳銃の生産性や小型化の面で最後まで足枷となり続けた。数少ない例外として、浜田式自動拳銃のうち二式拳銃が32ACP弾(一式拳銃)から8x22mm南部弾への設計変更の際に、ストレートブローバック構造を維持した事例があるが、元々の腔圧が高くない為にそれ程問題は起こらなかったようである。
ボトルネックの採用により、後の.357SIG弾のような強装薬の高速弾への発展の可能性はあったものの、肝心の採用拳銃の多くは複雑な構造のまま小型化を図った影響で、可動部分に強度の弱い箇所を抱える事となり、拳銃側の大口径化や、市販・軍用実包の薬量・弾頭重量増加などは最後まで行われないまま終わった。
- ^ a b 陸軍技術本部 1922.
- ^ a b 佐山二郎 2008, p. 197.
- ^ a b 『14年式拳銃取扱法』 1931, 第三章.
- ^ 九四式拳銃 - 25番
- ^ 陸軍造兵廠 1939.
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