黄金の夜明け団 分裂

黄金の夜明け団

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 02:34 UTC 版)

黄金の夜明け団(おうごんのよあけだん、英語: Hermetic Order of the Golden Dawn)は、19世紀末のイギリスで創設された西洋魔術結社、儀式魔術を実践する秘密結社で、典型的な秘教主義教団である[1][2]。中流階級の男女による近代オカルティズムの小グループである[2][3]黄金の暁会とも訳され、G.D.と略名される。


注釈

  1. ^ 江口之隆は「マサース」、ヘイズ中村は「マザース」、吉村正和は「マザーズ」とカナ表記している。
  2. ^ 原語はラテン語で「Ordo Rosae Rubeae et Aureae Crucis (R. R. et A. C.)」。「紅い薔薇と黄金の十字の教団」の意。澁澤龍彦は「紅薔薇黄金十字」[7]、江口之隆は「ルビーの薔薇と金の十字架」団と翻訳[8]
  3. ^ 英国薔薇十字協会は、秘教的な事柄に関心をもつ少数のフリーメイソン(フリーメイソンリーの会員)によって1866年に結成された[17]。メイソンのみで構成された団体ではあるが、フリーメイソン組織ではなく[18]、メイソンリーに付属する秘教研究会のような存在であった(黄金の夜明け団とは異なり、魔術は研究対象ではなかった)[19]。1870年代から1880年代にかけて、同協会ではいくつかの儀式や、カバラやフリーメイソンの象徴性についての講義などが行われていた[20]
  4. ^ 黄金の夜明け団の「神殿(: temple)」は一般にテンプルと和訳される。フリーメイソンリーなどでいうロッジの代替名である[22]。ロッジはメイソンリーを構成する組織的ユニットであり、第1に「特定の集会所に属する会員で構成される組織」、第2に「その構成員が集会を催す会場(建物)」という2つの意味を併せもつ[23]。元来は建築に従事する石工の設営する仮小屋を指したが、メイソンリーにおいては組織や会合を指す抽象的概念となり、また、その集会所はメイソンリーにとって重要なソロモン神殿の象徴ともみなされた[24]
  5. ^ アンナ・キングスフォードは1884年にヘルメス協会を設立し、東洋の霊性に焦点を当てていた神智学協会と異なり、ヨーロッパの秘教伝統に取り組んでおり、黄金の夜明け団の明らかな先駆者である[6]
  6. ^ 子どもを病気で亡くし失意のどん底にあったモード・ゴンは、交霊会やヴィジョン、あやしげな超能力者に救いを求め、心配した友人のウィリアム・バトラー・イェイツに説得され入団した[16]。しかし、彼女にとって教団の儀式は興ざめで、会員のほとんどは中産階級の俗さそのものにしか見えず、短期間で退会した[16]
  7. ^ アレックス・オーウェンは、アンリ・ベルクソンはオカルトには興味を持っていなかったが、彼の哲学と当時のオカルティストたちの世界観が、部分的に類似していることを指摘している[11]
  8. ^ 「真の自己」を指す造語[38]
  9. ^ 『デューン』に登場する主人公の母レディ・ジェシカは、ベネ・ゲセリットのメンバーである[9]

出典

  1. ^ a b c d e f Gillbert 2009, pp. 448–449.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 浜野 2012.
  3. ^ a b c d e f g h Owen Davies (2023年10月31日). “The Hermetic Order of the Golden Dawn and the Origins of Wicca”. Yale University Press. 2024年5月16日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k Hermetic Order of the Golden Dawn”. NEW RELIGIOUS Movements. 2024年5月16日閲覧。
  5. ^ a b c d e f Drury 2011.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab Denisoff, Dennis (2013年). “Dennis Denisoff, “The Hermetic Order of the Golden Dawn, 1888-1901””. BRANCH: Britain, Representation and Nineteenth-Century History. Ed. Dino Franco Felluga.. 2024年5月16日閲覧。
  7. ^ キング & 澁澤訳 1978, p. 90.
  8. ^ 江口 & 亀井 1983, p. 50.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af Jules Evans (2021年12月11日). “Occult eugenics and the Hermetic Order of the Golden Dawn(オカルト優生学と黄金の夜明け団)”. medium. 2024年5月18日閲覧。
  10. ^ a b c d e 杉山 2019, p. 71.
  11. ^ a b c d e f g h i j k SAMUEL FRANCIS (2004年12月). “The Left-Hand Path”. CHRONICLES. 2024年5月19日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g Gillbert 2009, p. 447.
  13. ^ a b c Gillbert 2009, p. 450.
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p MATHERS, SAMUEL LIDDELL MACGREGOR”. OCCULT WORLD. 2024年5月15日閲覧。
  15. ^ a b c Machin 2020.
  16. ^ a b c 杉山 2019, p. 79.
  17. ^ Goodrick-Clarke 2008, p. 196.
  18. ^ 吉村 2013, pp. 52.
  19. ^ 吉村 2013, pp. 62–63.
  20. ^ a b Goodrick-Clarke 2008, p. 197.
  21. ^ 吉村 2013, p. 64.
  22. ^ 有澤 1998, p. 37.
  23. ^ 有澤 1998, pp. 276–277.
  24. ^ 有澤 1998, pp. 277–278.
  25. ^ 吉村 2013, pp. 63–64.
  26. ^ 吉村 2013, p. 65.
  27. ^ 江口 & 亀井 1983, pp. 65–66.
  28. ^ 江口 & 亀井 1983, p. 65.
  29. ^ キング & 江口訳 1994, pp. 134–135.
  30. ^ a b Gillbert 2009, p. 448.
  31. ^ Gillbert 2009, p. 449.
  32. ^ a b c d 杉山 2019, pp. 161–163.
  33. ^ a b c d e f 杉山 2019, p. 162.
  34. ^ Mathers, S(Amuel) L(Iddell) MacGregor(1854-1918)”. encyclopedia.com. 2024年5月15日閲覧。
  35. ^ 江口 & 亀井 1983, pp. 93–94.
  36. ^ リガルディー編 & 江口訳 1993b, 訳者解説.
  37. ^ 杉山 2019, p. 72.
  38. ^ a b 吉村 2013, p. 67.
  39. ^ 吉村 2013, p. 73.
  40. ^ William Butler Yeats”. Britannica. 2024年5月19日閲覧。
  41. ^ 杉山 2019, pp. 72–73.





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「黄金の夜明け団」の関連用語

黄金の夜明け団のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



黄金の夜明け団のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの黄金の夜明け団 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS