静岡弁 アクセント

静岡弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/01 18:24 UTC 版)

アクセント

ほとんどの地域で東京式アクセントが用いられ、東部方言・中部方言の地域で東京と同じ中輪東京式、西部方言の地域で外輪東京式である。旧中川根町の水川・上長尾地区、浜松市の旧舞阪町地区周辺、湖西市新居町周辺で、東京式よりも型の数が一つ少ない準東京式が分布する。また、中川根に隣接する旧本川根町静岡市葵区の山間部は無アクセントである。

名詞

一拍名詞は、無アクセント地帯を除く全域で、第1類(子・戸など)・第2類(日・名など)は平板型(こ)、3類(絵・手など)は頭高型(が)である。つまり共通語と変わらない。

二拍名詞では、県西部で「橋」「冬」「紙」「川」などの第2類の語が平板型(ふゆが)になるのが共通語との相違点である。これは外輪東京式の特徴である。浜松市付近が平板型になる語が最も多く、東に進むにつれて尾高型(ふが)が増え、大井川以東ではほぼすべての語が東京とおなじ尾高型になる[4]。準東京式のうち、水川・上長尾では第1・2類は平板型、第3・4・5類は頭高型である[5]。舞阪では第1・2類は平板型であるが、第3・4・5類は助詞が付くか付かないかで下がり目が移動し、助詞が付かなければ頭高型(め(雨))、付けば尾高型(あが)である[5]。新居では第1・2類は平板型、第3・4・5類は尾高型(あが(雨が))になる[5]

三拍名詞では、富士川以東の東部方言では「朝日・油・命・心・姿・涙・火ばし・枕」など、第5類に属する語を「あひ」のように中高型とする。富士川以西の中部・西部方言ではほとんどが「さひ」のように頭高型となる[6]。全国的に見れば東京式アクセントの地域では大半が中高型であるが、東京周辺および静岡県中部・西部で頭高型となっている。準東京式の舞阪・新居では、三拍以上の語で浜松付近における頭高型の語が中高型になる[7]

また遠州中・西部では、東京で平板型に言う三拍名詞第六類(兎・雀・背中・ひばり・ねずみ…)・第七類(苺・後ろ・鯨…)が、地域により多少違いはあるものの、「さぎ」のように頭高型となる。ただし「兎・背中・ねずみ」は平板型にも発音される[6]

東京で尾高型に言う三拍名詞第四類(頭・男・鏡…)が、浜松市天竜区の旧天竜市春野町森町磐田市豊岡村、旧中川根町(準東京式地域を含む)など遠州の主として山間部で、「あま」のように中高型になる。この現象は愛知県三河北部や長野県下伊那郡南部まで連続する[8]

時系列

「時」などを表す場合はほとんど平板式で発音する傾向が強く、「月」などは3拍の単語が頭高型に、それ以上の場合は中高型で発音する傾向がある。

語彙 共通語(名詞は尾高、副詞は平板) 静岡弁
一月 ちがつ がつ
二月 がつ がつ
十一月 じゅういちがつ じゅういちがつ
十二月 じゅうにがつ じゅうにがつ
その他
語彙 共通語 静岡弁
午前 ぜん ぜん
午後
昨日 のう

動詞

三拍以上の動詞のアクセントは、共通語では大部分が中高型(なる)か平板型(きえる)であり、「いる」のような頭高型の語が少数ある。静岡県では、東部方言では共通語と同様である。しかし、富士川以西の中部方言・西部方言のアクセントは、3拍一段動詞で共通語で中高型のものを全て頭高型に発音する独特のものである。ただし準東京式の舞阪・新居では中高型。五段動詞では共通語と同様に平板型と中高型で、頭高型は「帰る」「入る」など少数である。[9][3]

二拍動詞のアクセントは「い」(言う)の形のものと「う」(合う)の形のものがあり、東京でも静岡でも変わらない[3]

三拍一段動詞のアクセント
活用形 東部・共通語 中部・西部
上げる げる げる
起きる きる

形容詞

3拍以上の形容詞も、共通語では中高型(しい)と平板型(くらい)がある。静岡県のうち、浜松市を中心とする中西遠では、三拍形容詞で共通語の中高型のものが「ろい」「かい」と頭高型になる。平板型の語は変わらない。その他の地域のうち、富士川以西の中部方言(東遠まで)および西部の湖西・湖北(旧細江町・旧三ケ日町湖西市)では連用形のアクセントが「しく」となる。共通語・東部(沼津市以東)・奥遠州(旧水窪町・旧佐久間町・旧龍山村)では、「しい」「ろく」である[10]

三拍起伏式形容詞のアクセント[10]
活用形 共通語・東部・奥遠州 中部・湖西・湖北 中西遠
白い ろい
白く ろく ろく

「無い」「良い」などの二拍形容詞は、東京でも静岡県でも頭高型である。

形容動詞

[要出典]

文 章
語彙 共通語 静岡弁
元気 んき
ひさしぶり さしぶり(平板または尾高) さしぶ

副詞

[要出典]

単 語
語彙 共通語 静岡弁
いよいよ いよ よいよ
そこそこ こそこ(平板)、そそこ こそこ
なかなか かなか(平板) かな
わざわざ ざわざ ざわ

未然形

中部・西部では「…ない」の「な」にアクセントが置かれる[11]

文 章
語彙 共通語・東部 中部・西部
出来ない ない きな
出ない ない
わからない からない からな
しない ない(平板)

連体詞

形容動詞の連体形は語尾から2番目の音節にアクセントが置かれる。[要出典]

文 章
語彙 共通語 静岡弁
大きな おきな おき
小さな いさな いさ

疑問詞

疑問詞(いつ、どこ、何、誰、どれ、等)は、西部(北遠を除く)では全て平板型で発音する[12]

その他

該当語句 共通語 静岡弁
…(な)かった (な)かった …(な)った
…の方 …のか(尾高) …の

  1. ^ a b 平山ほか編 (2002)、5-9頁。
  2. ^ 『講座方言学 6 中部地方の方言』1頁。
  3. ^ a b c d e f 平山ほか編 (2002)、10-19頁。
  4. ^ 山口幸洋「アクセントにおける移行性分布の解釈」
  5. ^ a b c 山口幸洋「準二型アクセントについて」
  6. ^ a b 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.157。
  7. ^ 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.160。
  8. ^ 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.157-158。
  9. ^ 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.158, 160。
  10. ^ a b 『講座方言学 6 中部地方の方言』pp.158-159。
  11. ^ 金田一 (2005)。
  12. ^ 平山ほか編 (2002)、44頁。
  13. ^ 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.168。
  14. ^ a b c d e f g h 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.166-170。
  15. ^ 『講座方言学 6 中部地方の方言』p.151-152。
  16. ^ a b c 平山ほか編(2002)
  17. ^ a b 大西拓一郎「方言の形成過程解明のための全国方言調査 方言分布の変化をとらえた!」『国語研プロジェクトレビュー』5-2、2014年、p.73。
  18. ^ 『講座方言学6中部地方の方言』p.174
  19. ^ 都竹通年雄「文法概説」飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編『講座方言学 1 方言概説』国書刊行会、1986年。






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