軍需産業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 00:47 UTC 版)
市場規模・収益規模
そもそも多くの国で、軍備に割く額はGDPの数%程度(世界平均で2%強、平和な国では2%未満)であり、またその中でも金額の大半を占めるのは兵士・職員の人件費である。そのため、市場規模としてはそれほど大きくない。
ストックホルム国際平和研究所によると、2019年の世界の防衛支出は1兆9170億ドル(約200兆円)で、アメリカがその38%を占める。アメリカに次ぐ中国は13.6%を占める[7]。
軍需産業として収益(売上高)規模が世界一の米ロッキード・マーティン社の2006年の売り上げは、世界規模の民間企業で比較すると56位でしかない。同様に軍需で世界2位の米ボーイング社は民間企業としては29位になる。軍需で2位の米ボーイング社と軍需で1位の米ロッキード・マーチン社が総収益額では順位が29位と56位と逆転するのは、それだけ米ボーイング社が軍需以外の部門の売り上げが大きいからである。
軍需3位の米ノースロップ・グラマン社はフォーチュン誌の世界企業売り上げランキングで100位に存在する。軍需4位の米ノースロップ・グラマン社と5位のレイセオンは216位と306位であり、防衛産業の巨人達も、世界企業としてはウォルマート社やゼネラルモーターズ社、トヨタ自動車社に比べれば、大人と子供程の違いが生まれる[5]。
ただし軍需産業は軍需部門がほぼ全て国家相手の売り上げであることから、ほぼ全ての売り上げが民間相手の企業とは全く異質な存在であり、軍需産業の特殊性や問題点は別に考慮する必要がある。たとえば商売相手が国であるため、支払いがスムーズ、需要が安定しているなどの独自のメリットがある。
兵器産業だけで見ても、2000年の防衛企業上位100社の全体の兵器売上高は、1,570億米ドルしかなく、この6割はアメリカの43社のものである。1980年代半ばの冷戦末期には世界全体の兵器への支出総額は、2,900億-3,000億米ドルで、2000年代の約2倍であったので、兵器市場は急激に小さくなったといえる。また例えば米国一国の他の産業と比べても、2001年のデータでは医薬品市場で2,280億ドル、自動車市場で6,000億ドル、雑貨で5,420億ドル、生命保険売上で8,000億ドル強、証券で3,400億ドルであったので、世界の兵器市場はそれほど大きくはない[8]。
日本の防衛装備庁によると、防衛装備品等の調達額の状況における2018年度の国内調達額は1兆6970億4900万円で、内訳は中央調達が1兆73億7000万円、地方調達が6896億7900万円となっている[7]。
- ^ N = New to the SIPRI Top 100
- ^ International Institute for Strategic Studies(IISS),The Military Balance 2006
- ^ “武器輸出、歯止めに課題=防衛協力を強化-新原則”. 時事通信. (2014年4月1日) 2014年4月7日閲覧。
- ^ “次期戦闘機F35:整備拠点国内設置を検討 防衛省骨子案”. 毎日新聞. (2014年4月4日) 2014年4月7日閲覧。
- ^ defensenews.comのレポート
- ^ a b c 野木恵一著 軍事研究 2007年9月号 『グローバル軍需産業の世界戦略』 p.28-p.39
- ^ https://www.sipri.org/sites/default/files/2018-12/fs_arms_industry_2017_0.pdf
- ^ a b “日本の防衛産業はパチンコ産業の1割以下――日本学術会議は軍事研究という「学問の自由」を認めないのか”. 高橋浩祐. Yahoo!ニュース (2020年10月29日). 2020年10月29日閲覧。
- ^ ポール・ポースト著・山形浩生訳 『戦争の経済学』 バシリコ株式会社 2007年11月11日初版第1刷発行 ISBN 9784862380579
- ^ “SIPRI Military Expenditure Database”. SIPRI. 2020年8月29日閲覧。
- ^ “世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)”. GLOBAL NOTE. 2020年8月29日閲覧。
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