皮革
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 08:15 UTC 版)
環境問題
皮革産業は汚染の激しい産業の一つであり、原材料である動物の皮を最終製品に変換する過程で使用される多くの化学物質が、土壌汚染、大気汚染、水質汚染、大気汚染の原因となっている[14][15]。持続可能性の観点から、近年では、動物の皮を使用するよりも環境負荷の低い、合成皮革の研究開発が活発化している[16][17]。Apple社は2023年、「すべての製品で皮革の使用をやめる」と宣言[18]。車や飛行機でも、合成皮革を使う動きが広まっており[19][20][21]、世界の合成皮革市場は2030年までに672億ドル規模に達すると予想される[22]。
1トンの皮を製品に仕上げるまで、20‐80立方メートル(20-80万リットル)の排水が出る。この水には、クロム、硫化物、窒化物などが大量に含まれる。また輸送中の皮革には、保存用の薬剤や病原菌が付着している[23]。中国では、動物愛護の観点から動物由来の製品を避ける消費者の増加とともに、電気自動車のシートや内装に人工皮革を使う動きが広がっている[24]。
牛の飼育のためにアマゾンでは6年間で8億本の木が伐採されており、牛革は森林破壊の要因にもなっている。森林破壊を伴わない持続可能な牛革の調達が近年求められており、アディダスやプーマ、マークス&スペンサーのように認証を受けた業者からの牛革調達を行っている企業が増加している[25]。
合成皮革
合成皮革(ごうせいひかく)、フェイクレザーとは、基布に樹脂等を付着させて、天然皮革類似の風合いとしたものをいう。天然皮革と異なり、水に濡れたりしても手入れが簡便であり、安価で品質も均一であることなどから普及している。単に「レザー」と言う場合、合成皮革を示す場合もあるが、レザーの意味は天然皮革である。
なお、広義の合成皮革は、狭義の合成皮革と人工皮革とに分類される。
ものによるが、天然皮革に比して劣化が早い傾向があり、天然皮革の靴や服のように自分の体に合ってくるということは少ない。例えば、ポリウレタン製のフェイクレザーなどは、使用状況、保管方法等にも依るが、約5年程度で劣化し使えなくなることが多い。
化学繊維で毛皮を模したものをフェイクファー、エコファーと呼ぶのに関連して、エコレザーが合成皮革のことだと勘違いされることがあるが、エコレザーは天然皮革である[26]。オーガニックコットンなどと似たようなもので、環境に配慮して製品化された天然皮革をエコレザーと呼ぶ。
培養皮革
生体細胞を細胞培養して、生物を犠牲にすることなく工業的に皮革を生産する研究が行われ、一部の企業は商業生産を始めている[27][28]。
- ^ “皮革”. 皮革用語辞典. 日本皮革産業連合会. 2023年2月23日閲覧。
- ^ “革”. 皮革用語辞典. 日本皮革産業連合会. 2023年2月23日閲覧。
- ^ a b 染韋(染革)の世界大百科事典
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- ^ “アイスマンの衣類に使われた動物を特定”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023年6月18日閲覧。
- ^ Püntener, Alois G.; Moss, Serge (2010-05-26). “Ötzi, the Iceman and his Leather Clothes”. CHIMIA 64 (5): 315. doi:10.2533/chimia.2010.315. ISSN 2673-2424 .
- ^ クジラの靴、紙屑を固めたカバン『東京朝日新聞』(昭和13年7月1日夕刊)『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p355 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ “腹子”. 皮革用語辞典. 日本皮革産業連合会. 2023年2月23日閲覧。
- ^ 17世紀、アイスランドの魔術師が実際に身に着けていた人間の皮膚で作ったズボン「ネクロパンツ」
- ^ a b c d e f 鍛治雅信. “かわのはなし(3)”. 東京都立皮革技術センター. 2020年7月6日閲覧。
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- ^ “Environmental Problems Caused By Leather Processing Units”. 20221109閲覧。
- ^ “Leather Industry”. 20221109閲覧。
- ^ “キノコ由来の人工皮革、長野で量産へ 環境負荷低く注目”. 20221109閲覧。
- ^ “ポリエステル原料の人工皮革 「持続可能性」で評価高まる 旭化成”. 20221109閲覧。
- ^ “Apple、「すべての製品で皮革の使用をやめる」と宣言 ストアからも消える”. 20230925閲覧。
- ^ “高触感の合成皮革ハンドルがLEXUS RXに採用”. 20221225閲覧。
- ^ “自動車内装用途で需要拡大しスエード調人工皮革の生産設備増強、投資額は100億円”. 20230218閲覧。
- ^ “ベンツも採用、「毛髪18分の1」繊維使った人工皮革…不況下の旭化成に吹いた「神風」”. 20230628閲覧。
- ^ “合皮の需要、大幅増へ~ウルトラファブリックスが予想”. 20221121閲覧。
- ^ Tanning and Leather Finishing サイト:多数国間投資保証機関
- ^ “中国EVの内装、人工皮革が快走 東レ高級品、販売倍増 動物愛護とも好相性”. 20230925閲覧。
- ^ “森林破壊のない皮革産業を2030年までに実現へ 米NGOや大手ブランドが呼びかけ”. 20230711閲覧。
- ^ エコレザー認定基準|日本エコレザー基準認定事業
- ^ “Would you wear leather that's grown in a lab?”. CNN. (2018年10月4日) 2019年3月23日閲覧。
- ^ “The Future of Leather Is Growing in a New Jersey Lab--No Animals Needed”. Inc.. (2018年4月) 2019年3月23日閲覧。
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