注射
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/27 03:47 UTC 版)
概要
注射は、直接的に生物(その多くでは人間)の体に薬剤を投入する方法で、経口投与(口から薬剤を投入する)や皮膚・粘膜への塗布、ないし吸引などよりも直接的に必要な個所(患部)に薬剤を投入できるため、他の投与方法より効果が出始めるまでの時間が短く、また吸収経路でろ過されてしまったり、他の物質に変質してしまったり、または吸収の過程にて解毒作用で分解されてしまうような種類の薬剤でも投与できるため、より確実な方法である。
反面、生体の組織に中空の針を貫通させるため、この侵襲(人為的に傷付けること)に対する拒否感や実質的な被害もあり、そういった問題を解決するために、様々な技術改良や器具使用の技能的な向上も日夜進められている。
アルコール消毒
厚生労働省の定める「予防接種実施要領」[1]によれば、アルコールによる接種部位の消毒をすべきことが明記されている。
消毒に用いられるアルコール綿はかつては、医療機関でアルコールと乾綿から作られ、作り置きされていたが、乾燥によるアルコール濃度低下によって消毒効果が低下することや、作り置きされたアルコール綿そのものが汚染される可能性もあった[2]。近年は個別包装のアルコール綿が用いられるようになってきており、こちらの方がコスト削減効果があるという報告がある[2]。
注射と苦痛
注射は、針を皮膚に突き刺す行為なので痛みがある。実際の痛み以上に、針が刺さるのが視覚的に痛いと感じてしまう。特に子供はこれを大いに嫌い、医者にかかるときに注射するかどうかは最大級の懸案である。ただ子の健康を案じている親の側にしてみれば、注射は経験上で劇的な効果が出易いとみなされ、注射してくれることを希望する場合もある。また飲み薬を出されるなどの投薬よりも、より直接的に医師が治療に参加している行為とも受け止められ、注射による治療を期待する場合も見られる。これは刺される側にとっては苦痛でありストレスを与えうるため、血液検査の後に血圧を測ると、心理的影響から普段より高い値が出てしまう場合もある。
注射の種類(使用する薬剤や様式・後述)によってもまちまちであるが、技能や患者の扱いがうまいなどの腕のよい者が注射すると、注射の際にそれほどの痛みは生じない。反面、注射する側が技能的に未熟であったり、注射される側が身構えたり暴れたりすると、余計に痛い場合も珍しくはない。こと技能的に未熟で、何度も針を刺し直しされたりすると、痛いどころの騒ぎではない。したがって患者が医者や看護師への評価する場合の基準に、注射の上手下手が大きな地位を占めることもある。また歯茎への注射のように、針を刺す部位にあらかじめ麻酔する場合もある。
なお穿刺の痛みは、注射に用いられる針の大きさや形状によっても大きく異なり、予防接種のような集団への注射では、圧力注射とも呼ばれる皮膚に高い圧力で薬剤を浸透させる針を使わない注射器が利用される場合もある。ほかにも、用途は限られるが極めて微細なため刺しても痛くない注射針「ナノパス33」というものも登場し、糖尿病患者がインスリン投与時に使用するインジェクター等に使用されている。
- ^ 定期の予防接種実施要領
- ^ a b 寺田喜平、他 (2005). “個別包装アルコール綿変更による経済効果”. 川崎医会誌 21: 161 .
- ^ “厚生労働省 B型肝炎訴訟について”. 武蔵野赤十字病院. 2019年5月27日閲覧。
- ^ “600人以上がHIVに感染、不潔な注射器が原因か”. AFP (2019年5月27日). 2019年5月27日閲覧。
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