正法寺古墳 正法寺古墳の概要

正法寺古墳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 10:28 UTC 版)

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正法寺古墳

正法寺古墳全景、右側が後円部
所在地 愛知県西尾市吉良町乙川西大山
位置 北緯34度47分22秒 東経137度05分08秒 / 北緯34.78944度 東経137.08556度 / 34.78944; 137.08556
形状 前方後円墳
規模 全長94m 
埋葬施設 不明
出土品 円筒埴輪・形象埴輪・小型器台
築造時期 古墳時代中期前葉
被葬者 不明
史跡 1936年 国の史跡に指定
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3DCGで描画した正法寺古墳
正法寺古墳墳形模式図

医王山正法寺の北西の山中に位置する。

周辺の環境

正法寺古墳は愛知県の中央部を縦貫する矢作川の河口部に位置する。現在の矢作川氾濫平野の海岸線は主に近世以降本格化した干拓により形成されたもので、海抜0m地帯が広がっている。近世以前の正法寺古墳が立地する丘陵は旧吉良町と旧幡豆町にまたがる標高115mの独立丘陵から東へ約400m張り出した半島となっていたとみられる。古墳時代の海岸線は遺跡分布などから現在より最大約10km内陸に入り込んでいたと推定され、その後、古代・中世には矢作川の堆積作用により徐々に陸地化が進行したものとみられる。 古墳の周囲2km以内の丘陵は斑レイ岩で形成されており、墳丘を覆う葺石はほぼすべて斑レイ岩が用いられている。古墳周辺の土壌は赤褐色粘質土であるが、これは斑レイ岩に含まれる鉄分の影響によるものである[1]

正法寺古墳の名称の由来となっている正法寺の由緒は、足利氏の援助により室町時代初期に真言宗鳳来寺の末寺として再興されたとされ、江戸時代初期に曹洞宗に改宗し、1702年からは領主旗本津田氏の祈願所として仏供料10石の奉納を受けていた[2]。江戸時代以来、眼病に霊験あらたかな薬師如来として近隣住民の信仰を集めている[1]、とされる。

保存と調査の経緯

正法寺古墳の墳丘やその南側の地域は、江戸時代から肥料や焚きものに利用する下草や落ち葉を採集する乙川村の入会地となっていた。1907年に古墳周辺の土地は正法寺に寄付されるが、墳丘部分は松林で、戦前ごろまで近隣住民が落ち葉の利用権を入札で決めていたという。墳丘が開墾を免れたのは入会地であったことが大きいと思われる。

古墳周辺は昭和初期に吉田公園として整備された。しかし1959年の伊勢湾台風で大きな被害を受け、その後公園は放置され、草が生い茂り安易に墳丘に近づけない状況となっていた。

1989年に吉良町教育委員会が竹下内閣の「ふるさと創生事業」の一環で(正法寺)古墳公園として再整備を行った[1]。 西尾市(吉良町)教育委員会では、今後史跡指定地内の公有地化を行い、史跡整備事業の実施を計画している。整備にあたっては三河湾を望む古墳の景観と、里山的な雰囲気を残すことを基本に進める[3]、とする。

本墳が古墳として広く認識されるようになったのは、小栗鐵次郎の調査による。墳丘測量図が作成され、全長89mの前方後円墳として紹介された[4]

墳丘測量図は1985年に改めて作成[5]。 2001・2002年度に吉良町教育委員会が史跡の範囲および内容確認のため、墳丘の再測量と発掘調査を行った。測量はラジコンヘリコプターの空中写真測量により、発掘調査は墳裾推定地や墳丘斜面に設置した計11本のトレンチによる[6]


  1. ^ a b c 「第1章 周辺環境と調査の経緯」『史跡正法寺古墳』吉良町教育委員会(2005年)
  2. ^ 町村合併10周年記念町誌編集委員会『吉良町誌』愛知県幡豆郡吉良町(1965年)
  3. ^ a b c d e f g h i 「第5章 考察」『史跡正法寺古墳』吉良町教育委員会(2005年)
  4. ^ 小栗鐵次郎「幡豆郡吉田町大字乙川正法寺古墳」『愛知県史蹟名勝天然記念物調査報告第十三』愛知県(1935年)
  5. ^ 加藤安信・松井直樹ほか『中根山遺跡』吉良町教育委員会(1989年)
  6. ^ 「第2章 墳丘の発掘調査」『史跡正法寺古墳』吉良町教育委員会(2005年)
  7. ^ 「第3章 出土遺物」『史跡正法寺古墳』吉良町教育委員会(2005年)
  8. ^ a b c 愛知県史編さん委員会編集『愛知県史 資料編3』愛知県(2005年)
  9. ^ 河内一浩「中期古墳の埴輪」『季刊考古学 第79号』雄山閣(2002年)など


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