本人訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 09:15 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動行政事件では行政庁が資格のある者を内部から指定することがある。
各国における本人訴訟
アメリカ
アメリカでは連邦法で当事者自らが訴訟を追行することを権利として認めている[1]。
しかし、訴訟法が論争主義または当事者対抗主義と訳されるアドバーサリ・システムと呼ばれる構造を採用しているため、弁護士なしでは的確な訴訟追行は一層困難である。それにもかかわらず、法律扶助予算の枯渇や適切なプロボノ弁護士への依頼困難などの事情が重なって本人訴訟の件数が増加しており、裁判所の処理速度が低下して訴訟手続が停滞し、問題となっている[2]。
ドイツ・オーストリア
弁護士強制主義が採用されており、弁護士でなければ裁判所における訴訟手続に関与できない[3]。したがって本人訴訟は不可である。
日本における本人訴訟
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
概要
日本の民事訴訟法は、弁護士強制主義を採用しておらず、本人訴訟が認められている。その背景にあるのは弁護士数の絶対的不足と偏在であり、弁護士会が対策を講じているにもかかわらず2017年時点でも弁護士不足の抜本的解決には至っていない[3]。
昭和62年度司法統計によれば、実質的審理が行われた訴訟のうち約25%において、当事者の双方または一方が本人訴訟であった[4]。
2014年の調査では、原告本人率は7.3%、被告本人率は19.4%であった[5]。
日本における本人訴訟の特徴
全体的特徴
寺尾洋 1990によれば、日本における本人訴訟の特徴として以下のようなことが挙げられる。
|
本人の属性
長谷川貴陽史 2021によれば、本人訴訟の当事者の属性には以下のような特徴がみられた。
|
本人訴訟に関与する主体の認識
本人訴訟においては、本人の側からは、「言いたいことを言わせて欲しいのに、裁判官に遮られてよく分からないうちに終わる」「相手に弁護士がつくと、法廷で相手方弁護士と裁判官との間でわけが分からない間に話が進んでいく」等、疎外感を感じる旨の不満が述べられることが多い。他方、法律家の側では、「事件の筋が掴みにくい」「手間がかかる」との感想が持たれる。これは、法律家側が効率的・法的に事件処理を進めたいのに対し、本人は言いたいことを言わせてほしいという、相容れない要求が対立しているからであるとみられる。この状況は、紛争のプロセスにおける当事者の心理的構えのあり方に影響を受けるものと考えられるため、本人側において紛争の解決へ向けて活動するということを主体的に認識し、法律家による発言遮断も議論の整理のためのものであることを理解するなど、主体的に法廷での対話の活性化へ向けて取り組むことで、本人側にとっても望ましい審理が実現できると考えられる[6]。
著名な本人訴訟
- 大澤恒夫 2009, pp. 206–208によれば、以下の著名事件は本人訴訟で追行された。
- 旭川市国保料訴訟(最高裁平成18年3月1日大法廷判決)
- 混合医療禁止事件(最高裁平成23年10月25日第三小法廷判決[7])
- 婚外子住民票事件(東京地裁平成19年5月31日判例時報1981号9頁)
- 村八分等禁止請求事件(東京高裁平成19年10月10日)
- その他、以下のような著名事件が本人訴訟であった。
脚注
- 本人訴訟のページへのリンク