星形成 小質量と大質量の星形成

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星形成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/19 21:34 UTC 版)

小質量と大質量の星形成

質量が違うと、星形成のメカニズムにも違いが生じると考えられている。小質量星の形成理論では、分子雲が回転しながら重力による収縮で密度が上昇してゆくことで小質量星が形成されることが、多数の観測結果とよく合致している。すでに述べたように、回転するガスとダストが重力収縮して中央の原始星へと物質が集積し、星周円盤を形成してゆく。太陽質量の8倍より重い星では、星形成のメカニズムはまだ不明の点が多い。

大質量星は降着する物質を押し返すほどの、大量の電磁波を放射する。かつてはこの輻射圧は、質量の大きな原始星への物質降着を妨げると考え、太陽質量の数十倍を超える大質量星の形成をうまく説明できなかった。近年の理論研究では、ジェットとアウトフローで円盤の双極方向にできた空洞状の領域から、大質量星が放射する電磁波のほとんどが抜け出してしまい、物質の降着を妨げないことがわかってきた。そのため現段階では大質量星も、小質量星の形成と同じような機構で形成されるらしいと、考えられるようになった。

大質量星を取り巻く星周円盤の有力な証拠は、複数の天体で確認されている。大降着率説と合体説など大質量星の形成に関する複数の理論が、現在観測による検証を待つ段階にある。

第1世代天体

宇宙の誕生(約138億年前[3])から最初に形成された天体はどのようなものだったかについて、21世紀に入りようやく知見が深まってきている。

これまでは最も遠い天体からの光を観測することでその当時の天体の姿を知ることができたが、宇宙マイクロ波背景放射が始まる宇宙の晴れ上がりの時代(宇宙誕生から約38万年後)から、最も遠い天体の形成(2014年現在の観測では、MACS0647-JDの観測から、約5億年前)までの間は、まだ観測ができていない。 そこで、宇宙の大規模構造の観測(CfA赤方偏移サーベイスローン・デジタル・スカイサーベイ2dF銀河赤方偏移サーベイなど)とその成立過程のシミュレーションが先行して行われていたことから、併せて最初の天体の成立のシミュレーションも行われた。東京大学カプリ数物研JPL京都大学などがスーパーコンピューターを使った研究結果では、宇宙誕生から1億年後から3億年後までに輝きを放つ最初の星、すなわち”ファーストスター”が誕生したとしている。この成立過程は、まず6000万AUほど(約1000光年)のダークマター銀河ハローが形成され、その中心の分子ガス雲に囲まれた領域に太陽質量の100分の1、密度は空気と水と中間程度の最初期の原始星が誕生し、周囲の豊富な物質を潤沢に取り込みながら最終的に太陽質量の40倍程度になったと報告[4][5]している。第1世代の星々はこのようにして誕生し、それまで水素やヘリウムなどの軽い元素しかなかった宇宙に、星の内部の核融合反応によって、それよりも重い元素を生み出す機構が登場したことになる。

非常に遠い星の光学観測は困難を極める。加えてこのような非常に古い星は現在はほとんど残っていないかもしれない。しかし、星からのスペクトルの観測で、重い元素を含まない天体が見つかれば、それはこうした第1世代の星を含む可能性がある。2010年1月、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した131億光年にある銀河の中に第1世代天体を含む可能性が高いことが解析の結果わかり[6]、2014年2月には、オーストラリアの天文学者が11年をかけて地球から6000光年の距離に鉄などの重い元素を含まない推定130億歳の古い星を発見したと報じられた[7]など近年発見が相次いでいる。

これらの第1世代天体がいつ生まれたかは、宇宙の再電離[8]の時期を特定するための重要な情報を与える。


  1. ^ C. Hayashi (1961年). “Stellar evolution in early phases of gravitational contraction”. Publications of the Astronomical Society of Japan 13: 450-452. http://adsabs.harvard.edu/abs/1961PASJ...13..450H. 
  2. ^ L. G. Henyey, R. Lelevier, R. D. Levée (1955年). “The Early Phases of Stellar Evolution”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 67 (396): 154. http://adsabs.harvard.edu/abs/1955PASP...67..154H. 
  3. ^ プランク衛星2013年公開の観測結果による。
  4. ^ [1]
  5. ^ 研究当初は原始星は太陽質量の100倍以上になるとの結果が得られたが、後に詳細なシミュレーションで、中心星からの輻射により周囲の星間物質を跳ね飛ばしてしまうためそれほどには大きくならないことがわかったという。
  6. ^ 131億光年かなたの銀河に「星の元祖」が存在か 宇宙史完成は間近”. アストロアーツ (2010年9月24日). 2014年6月24日閲覧。
  7. ^ 豪州研究者らによる「第一世代の星」発見について”. ロシアの声 (2014年2月20日). 2014年6月24日閲覧。
  8. ^ 宇宙の再電離とは、冷えて安定な中性元素となった水素が、星からの高エネルギーを受けて再び電離水素となったことを指し、これが宇宙に最初に星が現れた時期と考えられている。中性水素にライマンα線より短い波長の光があたると、その光をすべて吸収して連続した吸収領域をもったスペクトルとして観測される。電離水素に高エネルギーの光があたっても吸収されない。遠い天体からのスペクトルの観測では、天体から地球までの宇宙空間にわずかに残る中性水素によって吸収され、所々に鋭い吸収線が密集するライマンαの森と呼ばれるスペクトルが観測される。このような機構はガン・ピーターソン効果英語版と呼ばれている。


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