回折限界 より高い解像度の取得

回折限界

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/01 08:57 UTC 版)

より高い解像度の取得

回折限界の光学系をただ使うときよりも高い解像度を有するように見える画像を生成する技術が存在する[5]。これらの技術は、解像度のいくつかの面は向上するが、一般的に費用および複雑性が莫大に増加する。この技術はふつう画像化の問題の小さなサブセットにのみ適している。一般的なアプローチを以下に概説する。

開口数の拡大

顕微鏡の有効分解能は、側面から照らすことにより向上させることができる。

明視野もしくは微分干渉顕微鏡など従来の顕微鏡では、これはコンデンサを用いることにより達成される。空間的にインコヒーレントな条件下では、画像はコンデンサ上の各点から照らされた画像の合成として理解され、それぞれが対象の空間周波数の異なる部分をカバーする[6]。これは多くて2倍まで効果的に解像度を改善させる。

全ての角度から同時に照射すると(全開集光器)、干渉計のコントラストは低下する。従来の顕微鏡では最大解像度(全開集光器、NA = 1)はめったに使われない。さらに、部分的にコヒーレントな条件下では記録された画像が物体の散乱ポテンシャルに対して非線形になることがよくある(特に非自発光(非蛍光)の対象物を見るとき)[7]。コントラストを高めるために、そしてときどき系を線形化するために、(構造化光を用いた)非従来の顕微鏡は、既知の照明パラメータを有する一連の画像を取得することにより、集光器の照明を合成する。通常、これらの画像は全閉集光器(こちらもほとんど使われない)を使用した場合と比較して対象物の空間周波数の大部分をカバーするデータをもって単一の画像を形成するように合成される。

別の技術である4Pi 顕微鏡は、前方および後方散乱光を集めることにより有効開口数を2倍にし、回折限界を事実上半分にするために、2つの対に配置された対物レンズを使用する。インコヒーレントな照明および構造化照明を組み合わせ、前方と後方の散乱光の両方を集めることにより透明のサンプルをイメージングする際、完全な散乱球を結像することが可能である。

局在化に依存する方法とは異なり、このような系は照明(集光器)と集光光学系(対物レンズ)の回折限界により制限されるが、実際には従来の方法と比較して実質的な解像度の改善がもたらされる。

近接場の技術

回折限界はエバネッセント場が検出器に届かないと仮定しているため、遠方場においてのみ有効である。像平面から光の約1波長未満の範囲で作用する様々な近接場の技術は非常に高い解像度を得ることができる。これらの技術はエバネッセント場が非常に高い高解像度の画像を構築するために使用できる回折限界を超える情報を含むという事実を利用し、原理的に特定のイメージングシステムが近接場信号をどれだけうまく検出できるかに比例する要素により回折限界を破る。散乱光イメージングにおいて、走査型近接場光顕微鏡のような機器は周辺的に原子間力顕微鏡と似ている。そのような機器により記録されたデータはしばしば多くの処理を必要とし、本質的に各画像についての光学的逆問題を解決する。

メタマテリアルが基になっているスーパーレンズは、対物レンズを対象物のすぐ近く(通常は数百ナノメートル)に配置することで、回折限界よりも優れた解像度で結像できる。

蛍光顕微鏡法においては、励起と発光は通常異なる波長でおこる。全反射照明蛍光顕微鏡では、カバーガラスのすぐ上に位置するサンプルの薄い部分をエバネッセント場で励起し、従来の回折限界対物レンズで記録して軸方向の分解能を向上させる。

しかし、これらの技術は1波長を超えて画像にすることができないので、それらの適用性を制限する1波長より厚い対象物を画像化するのに使うことができない。

遠方場の技術

遠方場イメージング技術は、照明の波長と比較すると大きいが微細構造を含む対象物を画像化するのに最も望ましい技術である。これには細胞が複数の波長に及ぶが分子スケールまでの構造を含む、ほぼ全ての生物学的用途を含む。近年、いくつかの技術が巨視的な距離にわたりサブ回折限界イメージングが可能であることを示している。これらの技術は普通回折限界を超える解像度を生成するために材料の反射光における光学的非線形性を利用している。

これらの技術の中で、STED顕微鏡は最も成功したものの1つである。STEDにおいては、最初に励起し、次に蛍光色素を消すために複数のレーザビームが使用される。より多くの光を加えると画像が明るくなくなる消光過程により引き起こされる照明に対する非線形応答は、色素分子の位置についてのサブ回折限界情報を生成し、高い照明強度を使うことができれば回折限界をはるかに超える解像度が可能となる。


  1. ^ デジタル大辞泉. “回折限界とは” (日本語). コトバンク. 2020年11月1日閲覧。
  2. ^ Born, Max; Emil Wolf (1997). Principles of Optics. Cambridge University Press. ISBN 0-521-63921-2 
  3. ^ Lipson, Lipson and Tannhauser (1998). Optical Physics. United Kingdom: Cambridge. pp. 340. ISBN 978-0-521-43047-0 
  4. ^ Fliegel, Karel (December 2004). “Modeling and Measurement of Image Sensor Characteristics”. Radioengineering 13 (4). http://www.radioeng.cz/fulltexts/2004/04_04_27_34.pdf. 
  5. ^ Niek van Hulst (2009). “Many photons get more out of diffraction”. Optics & Photonics Focus 4 (1). http://www.opfocus.org/index.php?topic=story&v=4&s=1. 
  6. ^ Streibl, Norbert (February 1985). “Three-dimensional imaging by a microscope”. Journal of the Optical Society of America A 2 (2): 121–127. Bibcode1985JOSAA...2..121S. doi:10.1364/JOSAA.2.000121. 
  7. ^ Sheppard, C.J.R.; Mao, X.Q. (September 1989). “Three-dimensional imaging in a microscope”. Journal of the Optical Society of America A 6 (9): 1260–1269. Bibcode1989JOSAA...6.1260S. doi:10.1364/JOSAA.6.001260. 






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