双線型形式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/28 08:25 UTC 版)
付随する二次形式
双線型形式 B: V × V → F に対し、付随する二次形式 QB: V → F は QB(v) := B(v, v) で与えられる。
char(F) ≠ 2 のとき、二次形式はそれに付随する対称双線型形式の言葉を用いて定義することができる。同様の仕方で、二次形式の概念の、歪対称形式、エルミート形式、歪エルミート形式などに対応する変形版を定義することができる。これを一般にまとめた概念としてε-二次形式(ε-quadratic form) がある。
反射性・直交性
- 定義
- 双線型形式 B: V × V → F が反射的 (reflexive) であるとは、V の全ての v, w に対して、B(v, w) = 0 ならば B(w, v) = 0 が成り立つことを言う。
- 反射的双線型形式 B : V × V → F に対し、V の v, w が B に関して直交 (orthogonal) するとは B(v, w) = 0 が成り立つこと(これは B(w, v) = 0 が成り立つこととしても同じ)を言う。
双線型形式 B が反射的であるには、それが対称的もしくは交代的の何れかとなることが必要十分である[3]。反射性を落として考えるばあいには、左直交と右直交の概念を区別しなければならない。反射的空間においては左右の根基は一致し、自分以外の全てのベクトルと直交するようなベクトル全体の成す部分空間として、双線型形式の核、もしくは根基と呼ばれる。すなわち、行列表現 x をもつベクトル v が行列表現 A を持つ双線型形式の根基に属するというのは、Ax = 0 となること(いまの場合 xTA = 0 となることとしても同じ)である。根基は、常に V の部分空間である。根基が自明であることと、行列 A が非特異であることとは同値であり、従って、双線型形式が非退化であることとも同値である。
で定義される。有限次元空間の上の非退化二次形式に対し、写像 W ↔ W⊥ は全単射であり、W⊥ の次元は dim(V) − dim(W) で与えられる。
異なる空間
同じ基礎体の上の双線型写像
- B: V × W → F
に対しても、上で述べた双線型形式に関する議論の大半について同様の内容が成立する。例えばこの場合においても、双線型写像からは、V から W∗ への線型写像と W から V∗ への線型写像が誘導される。これらの写像が同型となることも起こり得る(有限次元の場合は、やはり一方が同型ならば他方も同型でなければならない)。その場合、B は完全対 (perfect pairing) である、または V と W とを双対にするという。
有限次元では、これはペアリングが非退化であることと同値である(空間は必然的に同次元となる)。(ベクトル空間ではなく)加群について言えば、非退化形式であるということがユニモジュラ形式であるという条件より弱い条件であるのとちょうど同じ意味で、非退化対であることは完全対であることよりも弱い条件になる。非退化ではるが完全ではない例としては、(x,y) ↦ 2xy による Z × Z → Z は非退化ではあるが、写像 Z → Z* の上に 2による積を引き起こす。
そこで、こういった場合に対しても双線型形式という言葉がしばしば用いられる。例えば、リース・ハーヴィは「八種類の内積」[5]について議論するのに、非零成分は +1 または −1 しか持たないような対角行列 Aij を用いてそれらの「内積」を定義した。ここでいう「内積」の中には、斜交形式や半双線型形式、エルミート形式であるようなものが含まれる。その議論は、一般の体 F ではなくて、具体的に実数体 R, 複素数体 C, 四元数体 H を詳述するものである。例えば
なる形の双線型形式は、実対称型(real symmetric case) と呼ばれ、R(p, q) (ただし p + q = n) というラベルで分類される。旧来の用語との関係については
実対称型双線型形式には非常に重要なものが含まれる。正定値の場合の R(n, 0) はユークリッド空間に対応し、また一つが負符号の R(n−1, 1) はローレンツ空間に対応する。n = 4 の場合のローレンツ空間はミンコフスキー空間またはミンコフスキー時空とも呼ばれている。R(p, p) なる特別な場合は分解型と呼ばれるものである。
と述べている[6]。
- ^ Jacobson 2009 p.346
- ^ Zhelobenko, Dmitriĭ Petrovich (2006). Principal Structures and Methods of Representation Theory. Translations of Mathematical Monographs. American Mathematical Society. p. 11. ISBN 0-8218-3731-1
- ^ Grove 1997
- ^ Adkins & Weintraub (1992) p.359
- ^ Harvey p. 22
- ^ Harvey p 23
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