三国志 (吉川英治) 影響および派生作品

三国志 (吉川英治)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 00:38 UTC 版)

影響および派生作品

本作の影響力は非常に大きく、その後の作家が書く三国志小説も多かれ少なかれ、吉川作品を意識したものとなった。中国文学者の中には、吉川の『三国志』は変に日本人向けにアレンジした小説であると顔をしかめる向きもあったものの[10]、その影響力および普及力は広く認められた。中国文学研究の泰斗吉川幸次郎は1962年に、『演義』ではなく正史『三国志』を元に「三国志実録」を発表、曹操の再評価をさらに高めていく。また1968年の柴田錬三郎による『柴錬三国志 英雄ここにあり』では、劉備に若い女性白芙蓉が従うなど吉川の影響が見られ、さらに本作よりも早く、諸葛亮が出師の表を上奏するまでで終了する(その後、柴田は続篇の『柴錬三国志 英雄生きるべきか死すべきか』で孔明死後の姜維中心の物語も書いている)。その後も正史『三国志』を元にした陳舜臣による『秘本三国志』(1977年)、北方謙三三国志』(1996年)をはじめ、日本で刊行された三国志小説には諸葛孔明の死で物語を終焉するものが多い。

横山光輝による漫画『三国志潮出版社・全60巻は本作を基調とした作品である。横山は中学生の時に学校の図書館で本作を読み感銘を受け、また弟が大学受験の頃に本作を読んで面白かったとつぶやいたのがヒントとなり、『三国志』の連載を始めたという。冒頭部の芙蓉姫のエピソードなども本作からそのまま採られており、全体として「吉川三国志」の漫画化といえよう。単行判コミック第1巻は1974年に出版され、一時中断を挟みながらも1986年に全60巻が完結した。大人向けとして書かれた本作に対して、子供に『三国志』の世界を伝える役割を果たし、日本の三国志ブームを加速させた[11]光栄(現コーエーテクモゲームス)から発売されたコンピュータゲーム『三國志シリーズ』もブームに貢献したが、シリーズ2作目の『三國志II』(1989年発売)では「芙蓉姫」や「かこうじゅん」の読みなど、本作の影響が見られる。また1982年から2年間放送されたNHK人形劇 三国志』はストーリー的には本作の影響は少ないが、やはり諸葛孔明の死をもって物語を終える構成となっている。


  1. ^ 吉川『三国志 序』より。
  2. ^ a b 雑喉2002、140頁。
  3. ^ 立命館大学中国文学専攻HP内三国志の世界『通俗三国志』
  4. ^ 小川環樹『中国小説史の研究』(岩波書店、1968年)。P169-171.
  5. ^ 雑喉2002、144-148頁。
  6. ^ 雑喉2002、153-154頁。
  7. ^ 雑喉2002、150-152頁。
  8. ^ 雑喉2002、141頁。
  9. ^ 高島俊男『水滸伝の世界』(大修館書店、1987年 ISBN 4-46-9230448)87-88頁、ちくま文庫で再刊。渡邉『三国志』、まえがき ii-iii頁、(中公新書、2011年)など。
  10. ^ たとえば高島2000、51頁など。
  11. ^ 雑喉2002、206-207頁。


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