リザンテラ属
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/15 21:41 UTC 版)
リザンテラ属 | |||||||||||||||||||||
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リザンテラ・ガルドネリ
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Rhizanthella | |||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||
本文参照 |
概説
この植物はいわゆる腐生植物(菌従属栄養植物)である。つまり光合成を行う器官を持っておらず、生命活動に必要なエネルギーは菌類に依存する。そのような栄養生活を営むラン科植物は腐生ランと呼ばれ、非常に多くの属種がある。それらはいずれも葉を持たないかごく小さく、緑色を帯びないものが珍しくない。しかしこの植物は地上に枝葉を全く出さず、全生活史を地下で過ごす。花さえも地表より下で開花する点で、被子植物全体としても極めて異例である。学名は「根の花」の意味で、地中で生活することにちなむものである[1]。
このランはオーストラリアのごく限られた地域でのみ発見されている。栄養は直接には菌類から得ているが、実際はそれらを介して特定の樹木と結びついており、それらから供給されていることが知られ、実質的には寄生植物である。
植物体は地下の芋状の構造のみからなり、開花時には茎を伸ばし、地表直下で開花する。僅かに姿を見せることもあり、花粉媒介は昆虫によるとされる。3種が知られ、それぞれ東オーストラリアと西オーストラリアに隔離分布するが、西オーストラリアに産するガルドネリ R. gardneri の方がよく研究されている。
特徴
ここではガルドネリについて説明する[2]。多年生草本で、植物体は全て地下にあり、根はない。植物体は地下茎様の塊茎からなる。塊茎は円筒形で長さ5cm、幅2cm - 2.5cmで、厚く毛に覆われる。個々の毛からは最大6本までの菌糸が続く。葉は三角の鱗片状に退化し、長さ3mm -4mm、幅10mm程度、根茎に圧着する。
花期は5月 - 6月、これはオーストラリアでは冬に当たる。花序は圧縮されて頭状花序となり、その花床の径は2cm - 4cmで、くぼんでいる。花序全体を包む総苞をなす苞葉は8 - 15あって花序を取り巻き、地下にある状態では花序全体を包んでいる。花茎は直立またはそれに近く、長さは3-7cm、先端に向かって細まる。無毛で苞葉が間を開けてついており、特に基部側に数が多くて花茎に圧着し、白か無色、長さ1cm - 2.5cmで幅3mm - 10mmと狭い三角形をしている。
子房は円筒形で長さ6mm、肉質で花被と共に密集して紫を帯びることがある。花は螺旋状に配列して総数120にも達し、外側のものから開花する。花被は白から海老茶色まで変異があり、長さは4mm - 6mm、唇弁以外の花被片は互いに融合して筒状になり、先端部が兜のような覆いとなって唇弁と蕊柱に覆い被さる。唇弁は細い顎状構造の上に伸びて敏感に動き、多肉質で先端は曲がってやや突出し、長さ1.5mm - 2.5mm、幅が0.7mm - 1.5mm。蕊柱は円柱形で長さ2mm - 2.5mm、先端に葯が突き出る。種子は卵形で幅0.3mm、藁色から暗褐色で、耐久性の外種皮には明らかな螺旋状の線条がある。
なお、スラテリでは開花期が6月 - 7月で、それから9ヶ月をかけて果実が熟する。果実は肉質で、この点ではガルドネリと共通であるが、その壁に葉緑素がある点が大きく異なり、これはこの種の方が原始的性質を残しているものと考えられる[2]。
分布
全てオーストラリアに分布し、種ごとに狭い分布域を持つ。ガルドネリは西オーストラリア州に、オミッサがクインズランド州に、スラテリがニューサウスウエルズ州に分布する[3]。ただしその範囲内でも生息域は極めて限定されており、ガルドネリではこの州内の隔離された2地点のみが生育区域である[4]。
- 1 リザンテラ属とは
- 2 リザンテラ属の概要
- 3 生育環境
- 4 歴史
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