ミリオンダラー・ベイビー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 02:03 UTC 版)
封切り
DVDリリース・派生作品
2000年代にアカデミー作品賞を受賞した作品では、日本ではブルーレイ化されていない唯一の作品であったが、2019年3月8日にブルーレイ、及びHDマスター版のDVDが発売された。
作品の評価
映画批評家によるレビュー
Rotten Tomatoesでは、本作は269のレビューに基づき90%の支持を得ており、平均評価は8.40/10である。「クリント・イーストウッドの確かな演出と、ヒラリー・スワンクやモーガン・フリーマンの見事な演技が相まって、『ミリオンダラー・ベイビー』は陳腐な表現を超越し、深い感動を与えてくれる」というのが同サイトの批評家の共通見解である[10]。Metacriticでは、39人の批評家によるレビューをもとにした加重平均スコアが100点満点中86点となり、「全世界で高い評価を受けている」ことが示された[11]。CinemaScoreによる観客の投票では、A+からFの評価で「A」を獲得した[12]。
興行収入
本作は米国公開時の2004年12月には、8館で限定公開された[13]。後に本格的に公開されると、北米で12,265,482ドルを稼ぎ出し、瞬く間に国内外での興行的ヒットとなった。劇場興行収入は216,763,646ドル、米国で100,492,203ドル、その他の地域で116,271,443ドルであった。この映画は6か月半の間、劇場で上映された[1]。
受賞歴
第77回アカデミー賞において、マーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』との「巨匠対決」を制し作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞の主要4部門を独占したのを始め、多数の映画賞を受賞した。
- 第77回アカデミー賞
- 受賞 - 作品賞/監督賞/主演女優賞/助演男優賞
- ノミネート - 主演男優賞/脚色賞/編集賞
- 第62回ゴールデン・グローブ賞
- 受賞 - 監督賞/女優賞(ドラマ部門)
- ノミネート - 作品賞(ドラマ部門)/助演男優賞/音楽賞
- 第10回放送批評家協会賞
- 受賞 - 主演女優賞
- ノミネート - 監督賞/助演男優賞
論争
本作品の主テーマが尊厳死や安楽死にあるわけではないが、この問題はキリスト教右派が無視できない勢力を持つアメリカでは極めてデリケートな問題であり、保守派コメンテーター、障害者団体、キリスト教団体によるこの映画のボイコット運動などが起こり話題になった。
イーストウッドはこの件に関して、映画の中におけるフィクションの登場人物による行動と、イーストウッド自身の思想や言動は全く無関係であり、この作品はあくまで彼のアメリカン・ドリーム観を表現したものであると述べている。
その他、この映画に関しては様々な反応があった。
障害者団体
2005年初頭、幾人かの障害者権利活動家が映画後半の、マギーが四肢麻痺患者となったあとで死にたいと漏らしフランキーがその願いを実現させた部分に対して論争を起こした[14][15][16]。
またウィークリー・スタンダードもこの映画の結末に対し、生きる機会を軽視したと批判している[17]。
アイルランド語の話者
アイルランド語の使用者の中には、マギーのガウンの背中に刺繍された言葉である「モ・クシュラ」(Mo Chúisle)が、映画の中では「Mo Cuishle」とスペルを間違われているという指摘がある。さらに映画の中では「モ・クシュラ」を「おまえは私の親愛なる者、おまえは私の血」(My darling, my blood)と訳している。(「モ・クシュラ」は「おまえは私の鼓動だ(My pulse)」を意味するゲール語の親愛表現であり[18]、「A chúisle mo chroí」(ああ、私の心臓の鼓動よ)の短縮形である。) ともあれ、「モ・クシュラ」はこの年のハリウッド映画の中でももっとも影響力のあったフレーズであったとも言われており、この映画はアメリカにおけるアイルランド語への関心を高めたとして賞賛する声もある[19]。
主人公はアイルランドの古い言語であるゲール語を独学していて出身に誇りを持っている。ハングリーな女性を一流のボクサーに育てて、やがてイングランドのチャンピオンと戦う時は、民族の象徴たる「グリーン」のガウンをまとって挑ませる。宗教はカトリックである。
スポーツライター
スポーツライターの中には、この映画はボクシング関係者から見れば非常に不正確で混乱させられるものだという批評もある。ボクシング・シーンは非現実的で、マギーを後ろから殴ったボクサーは本来ならプロの権利を剥奪され法廷送りになるのは明白だ、というものである。原作では試合中に起きた事故という設定になっている。しかし、医療機器の描き方が的確でないことを考慮すれば、こうした脚色はイーストウッドの「映画的演出」の一環である、との捉え方もある[20]。
注釈
- ^ 第二次世界大戦時の乗組員の写真を3枚折りたたむシーン。
出典
- ^ a b “Million Dollar Baby” (英語). Box Office Mojo. 2024年1月11日閲覧。
- ^ 2005年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟. 2024年1月11日閲覧。
- ^ Leibowitz, Ed (2008年2月1日). "The Fabulist: Paul Haggis Reflects on His Career Los Angeles Magazine". Los Angeles Magazine (英語). 2024年1月11日閲覧。
- ^ Clarke, Cath (2011年1月6日). "Paul Haggis: 'You have to question your beliefs'". The Guardian (英語). 2024年1月11日閲覧。
- ^ Eliot 2009, p. 309.
- ^ a b Hughes 2009, p. 156.
- ^ "Million Dollar Baby (2004) - Trivia". IMDb (アメリカ英語). 2024年1月11日閲覧。[信頼性要検証]
- ^ a b Leung, Rebecca (2005年3月2日). "Hilary Swank: Oscar Gold – 60 Minutes" (英語). CBS News. 2013年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月9日閲覧。
- ^ Hughes 2009, p. 157.
- ^ "Million Dollar Baby". Rotten Tomatoes (英語). Fandango Media. 2024年1月11日閲覧。
- ^ "Million Dollar Baby" (英語). Metacritic. Red Ventures. 2024年1月11日閲覧。
- ^ "MILLION DOLLAR BABY (2005) A". CinemaScore (英語). 2018年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月20日閲覧。
- ^ Hughes 2009, p. 160.
- ^ Hockenberry, John. "And theLoser Is, a critique of million dollar baby". milliondollarbigot (英語). 2005年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年2月19日閲覧。
- ^ Ertelt, Steven (2005年2月3日). "Clint Eastwood's "Million Dollar Baby" Euthanasia Plot Offends Disabled". LIFENEWS.COM (英語). 2005年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年2月7日閲覧。
- ^ Miner, Michael (2005年1月28日). "Dubious Conclusions - Hot Type". Chicago Reader (英語). 2005年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年2月6日閲覧。
- ^ Smith, Wesley J. (2005年3月1日). "Million Dollar Missed Opportunity : What Clint Eastwood's Oscar-winning movie could have done". the Daily Standard (英語). 2005年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年3月3日閲覧。
- ^ "Million Dollar Baby movie - Lessons > Frequently Requsted Translations". Irish Gaelic Lessons (英語). 2005年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年10月21日閲覧。
- ^ Davis, Wes (2005年2月26日). "Fighting Words". New York Times (英語). 2024年1月11日閲覧。
- ^ Bayless, Skip. "Let's KO 'Million Problem Baby'". ESPN.com (英語). p. 2. 2024年1月11日閲覧。
固有名詞の分類
アメリカ合衆国の映画作品 |
マーダー・ライド・ショー カンバセーションズ ミリオンダラー・ベイビー 死にゆく者への祈り ブレイブ ワン |
映画作品 |
混線婿君 ロック・ホラー・ベイビー 死霊の子守歌 ミリオンダラー・ベイビー エニグマ 刑事ジョー ママにお手上げ |
- ミリオンダラー・ベイビーのページへのリンク