フォルケホイスコーレ 歴史

フォルケホイスコーレ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 15:48 UTC 版)

歴史

アスコウのフォルケホイスコーレ。1885年

デンマーク語の 「フォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)」は、フォルケが人々、ホイが高い、スコーレが学校という意味で、日本ではそれを直訳した「国民高等学校」が大正初期から訳語として主に使われてきた。19世紀の詩人であり聖職者のグロントヴィが最初に構想し、1884年に最初の学校が設立された[6]。生徒たちは初等教育のみで社会に出た18歳以上の若者たちで、主に農民を対象にしていたため、農閑期に1か月から3か月ほどその学校に寄宿し、歴史教育などを通じてデンマーク人としての教養を身につける国民的啓発の場と考えられてきた[6]

1851年にクレステン・コル(Christen Kold) によって、校長の人格的指導性に導かれたひとつの「家」のような寄宿制をもつ教育システムとして確立され、1864年から1900年にかけて隆盛し、デンマーク国内に80校ほどに広がった[6]。これらは都市の教養市民を育成する伝統的なラテン語学校と異なり、すべて私立であり、卒業免状もなく、民衆の大多数である農民を相手とする補習学校的な意味を持ち、この存在がデンマークの農産物輸出の成功をもたらした「協同組合システム」(産業組合)を機能させる背景を形作る源となった[6]。1891年にアスコウ・ホイスコーレ講師ポール・ラ・クールが農村に電気を普及させるために世界初の風力発電機を建設するなど、デンマークの発展に大いに寄与した[7]

旧来の学校内で完結する教育に対し、より実践的な農家での実習に重点を置くこの教育システムは、ドイツ、スイス、オーストリア、オランダ、スウェーデン、ノルウェーなど、デンマークの周辺諸国にも広がり、各国でそれぞれに発展していった[2]。分野も多方面にわたる。


  1. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『国民高等学校』 - コトバンク
  2. ^ a b c d e f 上野忠義「日本における農業者教育」『農林金融』第67巻第4号、農林中央金庫、2014年4月、246-267頁、ISSN 13425749 
  3. ^ a b 日本経済新聞』朝刊2019年9月29日「デンマーク 大人の学校」NIKKEI The STYLE(9-11面)
  4. ^ 岩﨑正吾、「児玉珠美著『デンマークの教育を支える「声の文化」─オラリティに根ざした教育理念』」『国際教育』 2018年 24巻 p.63-67, doi:10.24751/jies.24.0_63, 日本国際教育学会
  5. ^ 夏目孝茂 “生"を見つめる教育 : デンマークの市民運動・市民大学(フォルケホイスコーレ)に学ぶ, NCID BN10662426
  6. ^ a b c d 「日本のデンマーク」安城に見る我が国の海外文化の受容に関する一考察村井 誠人、早稲田大学大学院文学研究科紀要. 第4分冊 51, 87-112, 2005
  7. ^ * 北嶋守デンマークにおける風力発電機の普及と産業化のプロセス:農機具鉄工所を世界企業に変貌させた技術・組織・制度」『機械経済研究』第39号、機械振興協会経済研究所、2008年3月、1-16頁、ISSN 09128271 
  8. ^ Powerpointpresentation[リンク切れ] av folkhogskoleiden fran folkhogskolornas informationstjanst
  9. ^ 内村鑑三『デンマルク國の話 : 信仰と樹木とを以て國を救ひし話』(8版)聖書研究社、1930年。doi:10.11501/916447NCID BA44620935https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/916447 
  10. ^ 台湾総督府殖産局『丁抹農業論』臺灣總督府民政部殖産局〈殖産局出版〉、1912年。doi:10.11501/986653NCID BN11948865https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/986653 
  11. ^ 「トネリコの里」からの「知性・教養・個性」と南原繁の教育哲学 : 自校史・郷土教育と子ども育成学構築の基礎的研究大藪敏宏 (富山国際大学, 2015-03-31) 富山国際大学子ども育成学部紀要. 6
  12. ^ 宮沢賢治と岩手国民高等学校藤田秀雄、立正大学人文科学研究所年報24号、1986
  13. ^ 松前重義と建学の精神 東海大学
  14. ^ 真空・結晶化の思想──内村鑑三の「自然大崎満 サステナnew. (30) 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構[他] (東京大学, 2013-07-01)
  15. ^ 『ホイスコーレ札幌(社会人の学びの場)創設 』


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