デアリング級駆逐艦 装備

デアリング級駆逐艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/29 06:26 UTC 版)

装備

上記の経緯により、艦砲としては45口径11.4cm砲(QF 4.5インチ砲Mk.V)を最大仰角80度のRP41 Mk.VI*連装砲架と組み合わせて搭載した。これは甲板下への埋め込み部分を排したモデル("Upper Deck")であり、1947年より前期バトル級「セインツ」で海上試験が行われており、当初は後期バトル級の後期建造艦から装備化する予定であったが、これは発注そのものが取り消されたことから、本級での装備化となった[3]。なお本級での搭載とあわせて、砲も砲架とあわせてMk.6と改称された。方位盤としては、前期バトル級のMk.VI(275型レーダー装備)およびフライプレーン照準算定機の組み合わせが踏襲され、改良に伴って後にMk.6Mと改称されたほか、1963年以降はMRS-3(903型レーダー装備)に更新された[8]

近距離用の対空兵器は、当初は新開発のBUSTER式56口径40mm連装機銃が検討されていたものの、結局、後期バトル級と同じSTAAG(Stabilized Tachymetric Anti-Aircraft Gun)式56口径40mm連装機銃となり、機銃射撃指揮装置もMRS-1からCRBF(Close Range Barrage Fire)に変更された。また後に、軸線上の機銃はMk.Vに変更され、その機銃射撃指揮装置は艦砲の副方位盤としても使えるように措置された[3]

対潜兵器としては、計画段階では対潜迫撃砲を廃して爆雷のみとすることも検討されたものの、最終的にはバトル級と同じくスキッド1基が搭載された。なお新開発のリンボーの搭載も予定されていたが、これは実現しなかった[3]。ただし、オーストラリア海軍向けに建造された「ヴォイジャー英語版」「ヴェンデッタ」「ヴァンパイア」は、イギリス艦のスキッドの替わりにリンボーを1基装備して建造された[9][10][11]

対艦兵器としては、バトル級で再度雷装強化に舵を切っており、同級の21インチ5連装魚雷発射管2基という構成が踏襲された[3]。ただし後部発射管は1958年から1959年にかけて、また前部発射管も1963年の改修で撤去された[2]

オーストラリアでの近代化改修

博物館船として展示されている「ヴァンパイア」

1970年代前半に、オーストラリア海軍は手持ちのデアリング級駆逐艦3隻のうち、「ヴァンパイア」と「ヴェンデッタ」の2隻に大規模な近代化改修を行った[11][10]

改修の内容は以下のとおりである[10]

  • 艦橋を原型の開放式から、閉鎖式に変更。
  • 早期警戒レーダーをLW-02に換装。
  • 新型航法レーダーを追加。
  • 射撃管制レーダーを、オランダ製のM22に換装。
  • 前部煙突に覆いかぶさるように設置されていたラティスマストを撤去。これに伴い293型レーダーも撤去。
  • AIC(Action Information Center)や通信装置、砲塔などの改良。

このほか、アイカラ英語版対潜ミサイルシーキャットPDMSの追加装備も計画されていたが、予算面の都合から見送られた[10]

「ヴァンパイア」は1970年6月29日から1971年11月17日まで[11]、「ヴェンデッタ」は1971年9月29日から1973年5月2日まで[10]、近代化改修が行われた。

また、「ダッチェス」は、バトル級駆逐艦アンザック英語版」の後継として、ウィリアムズタウン造船所英語版において1973年1月3日から1974年8月14日にかけて練習艦に改修された。この際にX砲塔(後部砲塔)やスキッド対潜迫撃砲、魚雷発射管を撤去して、練習生のための教室や訓練設備を取り付けている[12]


注釈

  1. ^ オーストラリア海軍向けに建造されたヴォイジャー級の3隻はリンボーを1基搭載
  2. ^ アメリカ海軍が1938年度計画で建造したベンソン級では50,000馬力に対して693トンであった[5]
  3. ^ アメリカ海軍の駆逐艦はベンソン級より缶機のシフト配置を導入するとともにボイラー4缶の構成となった。また積極的に蒸気の高温・高圧化を進めたことで機関出力も増強されており、ベンソン級では圧力615 lbf/in2 (43.2 kgf/cm2)、温度825 °F (441 °C)としてバトル級と同等の50,000馬力、1941年度計画のフレッチャー級では圧力は同様であったものの温度を850 °F (454 °C)とし、出力は60,000馬力に達した。ただし機関の小型軽量・高効率化を図ってタービンを高速回転としたこともあり[7]、推進器の回転数が早く、水中放射雑音が大きいという問題があった[3]
  4. ^ D106は当初「ドラゴン」(HMS Dragon)として発注されていた
  5. ^ D119は当初「ディスダイン」(HMS Disdain)として発注されていた
  6. ^ D126は当初「ドルイド」(HMS Druid)として発注されていた

出典

  1. ^ a b 中川務「イギリス駆逐艦史」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、122 -126頁、ISBN 978-4905551478 
  2. ^ a b c d Robert Gardiner, ed (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. p. 505. ISBN 978-1557501325 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Norman Friedman (2012). “New Destroyer Classes”. British Destroyers & Frigates: The Second World War & After. Naval Institute Press. pp. 108-131. ISBN 978-1473812796 
  4. ^ a b c Raymond V. B. Blackman, ed (1954). Jane's Fighting Ships 1953-54. Watts. p. 31. ASIN B000R5B066 
  5. ^ Norman Friedman (2004). U.S. Destroyers: An Illustrated Design History. Naval Institute Press. p. 470. ISBN 9781557504425. https://books.google.co.jp/books?id=Tzp58htKLkEC 
  6. ^ a b 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、164-171頁、ISBN 978-4905551478 
  7. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、156-163頁。 
  8. ^ 高須廣一「兵装 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、172-179頁、ISBN 978-4905551478 
  9. ^ a b Royal Australian Navy - HMAS Voyager (II)
  10. ^ a b c d e f Royal Australian Navy - HMAS Vendetta (II)
  11. ^ a b c d Royal Australian Navy - HMAS Vampire (II)
  12. ^ a b c d Royal Austlaian Navy - HMAS Duchess





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「デアリング級駆逐艦」の関連用語

デアリング級駆逐艦のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



デアリング級駆逐艦のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのデアリング級駆逐艦 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS