ガル・ヴィハーラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/19 16:19 UTC 版)
仏陀坐像
高さ15フィート2.5インチ (4.636 m) の大型像で定印を結び、蓮華座に載っている[18]。下部の台座は花と獅子が彫られている。後屏の左右に柱が立てられており、獅子を咥えたマカラ像があしらわれている。上部には小型の厨子が4つあり、それぞれに化仏が彫られている。これはシンハラ彫刻には珍しい様式であり、おそらく大乗仏教の影響を受けた結果である[19]。
洞窟の仏陀坐像
中央の洞窟内にある彫像で、外見は左側の大型坐像に似るが、像高は4フィート7インチ (1.40 m) と小型である[20]。洞窟は岩の前面から4.5フィート (1.4 m) 奥まで彫り込まれる形で作られている。開口部は幅が26フィート (7.9 m) 、高さが12フィート9インチ (3.89 m) あり、計4本の石造四角柱が両脇に配置されている[21]。この坐像も、蓮華座の台座部分は獅子が彫られている。像の背面には、大坐像よりも精巧な後屏と天蓋が配置されている[22]。像の頭部周囲には光背があり、四臂を持つ神像が両脇に配置されている。考古学者H・C・P・ベルによれば、右はブラフマー神、左はヴィシュヌ神である[21]。かつて洞窟内は壁画が描かれており、後方の両角にその痕跡が残されている[22]。
立像
ガル・ヴィハーラの立像は仏陀でないとする見方があり、歴史学者や考古学者の間でその正体を巡る議論が続いている[23]。立像は高さが22フィート9インチ (6.93 m) あり[24]、蓮弁の形をした低い台座の上に立っている。胸の前で腕を組み、ゆったりと後方にもたれかかった姿勢である。表情は悲しげで、右隣に涅槃像が横たわっていることから、仏陀の死を嘆くアーナンダの像であるとする見方がある[25]。ただし、現場の壁の残骸から推測すると、立像と涅槃像はかつて別個の屋内に安置され、直接隣り合ってはいなかった[26]。パラナビタナ博士によれば、本像も仏陀であり、手印は「他者の悲しみを悲しむ」(para dukkha dukkhitha)様子を表しているという[27]。この印がシンハラ彫刻で見られるのは稀で、スリランカ国内では数例しかない[26]。他の可能性として、この立像はゴータマの悟りから2週間目の姿で[28]、悟りに至る場所を授けてくれた菩提樹に感謝している様子であるという[29]。「チューラワンサ」はこの像について触れておらず、他の3体のみに言及している。立像が仏陀でないため記されてないとも考えられるが、一方で他の3体よりも早い時代に制作された可能性もある[23]。
涅槃像
長さ46フィート4インチ (14.12 m) の涅槃像は、ガル・ヴィハーラ最大の像であり[30]、東南アジアで最も大きい彫像の部類に入る[31]。仏陀の入滅の様子を表し、右腕で枕に載った頭を支え、左腕は体と太ももに沿って伸ばした格好で、右側を下にして横たわる像容である。右手の手のひらと足の裏は、蓮の花一輪が彫られている[32]。スリランカ考古学局の元長官、チャールズ・ゴダクンブレは、仏陀の枕が非常によくできていて、岩から彫られたものには見えず、まるで綿の詰まった枕のようだと述べた[33]。像の上側にある足、すなわち左足はわずかに引いた姿となっており、仏陀がただ単に横たわっているのではなく、入滅したことを示している[34]。ガル・ヴィハーラの他の像とは異なり、装飾が施された台座はなく、平らな岩そのものの上に横たわっている。像の背後の岩壁は、軸受けのような穴が数か所ある。石柱2本の残骸とともに、以前は像を覆う木製の屋根があったことを示唆している[32]。
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- ^ “Site - Polonnaruwa”. zamaniproject.org. 2019年10月28日閲覧。
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