アルセロール・ミッタル・オービット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 02:36 UTC 版)
デザイン
解釈
カプーアによると、市長から簡潔に出された要件は、「少なくと100メートルの高さを持つ塔」というものだった。一方バルモンドによると、市長は「エッフェル塔に匹敵するような象徴的建物を望んでいる」と伝えられたとの事である[14]、
カプーアによると、『オービット』のデザインに影響を与えたのはバベルの塔(「実現不可能な建物」を意味し「何がしか神話性を帯びたもの」)であり、エッフェルとタトリンを同時に形にするというものだった[14]。軌道のメタファーを担当したバルモンドは、運動している原子軌道を思い描き、不安定ながら自身を支えるような「決して中心を持たず、決して直立しない」構造を作り上げた[14]。二人が信じるところでは、『オービット』は新しい思考法を表現している。すなわち非直線性を用いた「根本的に新しい構造、建築、美術」である。… 「不安定性を以って安定性」をもたらすのである[14]。ねじれた鋼鉄に挟まれた構造の内部空間は、バルモンドによると「大聖堂のよう」であり、一方カプーアによると来館者が螺旋状の通路を歩きながら「自ら次第に巻き上げられてゆく」ことで作品を体験できるよう意図したとのことである[14]。
『インデペンデント』紙は『オービット』を、「切れ目なくループする格子であり … 8本のより糸が相互にからみつき、角張った結び目のような輪で結びつけられている」と表現している[15]。また『ガーディアン』紙は、「巨大な格子状の三脚は、見せびらかすようにバランス用の首飾りを首に巻きつけ、それはレストランと展望台の2フロアを持つ頭部の重量感を相殺するようデザインされている」と表現している[16]。また BBC によると、塔はオリンピックのシンボルの 5 つの輪を具現化したものだという[17]。
計画を始めるにあたり、ジョンソンはその「驚くべき」デザインに言及した。「この塔は古代ローマ人を驚かせたことだろう。またギュスターヴ・エッフェルを驚かせたことだろう[15]。」設計委員会の一人ニコラス・セロタは次のように述べている。「『オービット』は興味深い螺旋を持つ塔である。この種の建築物から伝統的に感じられるようなエネルギーを備えながらも、その形状は驚くほど女性的なのだ[18]。」
名称
ミッタルによると、『オービット』はカプーアとバルモンドのデザインに既に付けられていた仮題であり、それは絶え間ない道程を象徴し、オリンピック選手たちが絶え間なく向上しようと努める並外れた身体的・精神的努力の創造的表現だとの事である。これは後の正式名称にも残され、計画の後援者としてミッタルの会社名アルセロール・ミッタルが前に置かれることが決まった[5]。
『オービット』のデザインを発表するにあたり、ジョンソンは塔の公式名が別のものになったかもしれない可能性を認め、「ストラトフォードの巨人」と「水パイプ」の二つを挙げた。後者は塔が巨大な水煙草に似ているという彼の意見によるものであり、他にも人々が似ていると感じたものとして「巨大な音部記号」「ヘルター・スケルター」「特大サイズの突然変異トロンボーン」があった[11]。
設計者
『オービット』は「アニッシュ・カプーアとセシル・バルモンドの設計」とされている[19]。カプーアはターナー賞を受賞した造形美術家であり、バルモンドは世界でも屈指の建築設計家の一人である。カプーアによると、二人は建築と造形美術の融合、その形状が建築物へと結実する過程に関心を持っている[20]。カプーアとバルモンドはお互いの関心が相手の分野に微妙に重なっていると述べている。それは二人が初めて共同制作をした2002年、すなわちテートモダンのタービン・ホールにカプーアの『マルシュアース』を設置したとき以来のことである[20]。『オービット』と同様、2010年にカプーアとバルモンドは北イングランドのパブリック・アート・プロジェクトであるティーズ・バレー・ジャイアンツで共同制作を行なっている[20]。
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