T型褐色矮星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 19:13 UTC 版)
GD 165B がL型褐色矮星の原型であるのと同様に、グリーゼ229BはT型という新しいスペクトル分類の原型である。L型矮星の近赤外線スペクトルが H2O と一酸化炭素 (CO) による強い吸収バンドを見せる一方、グリーゼ229Bの近赤外線スペクトルはメタン (CH4) の吸収バンドで占められている。この特徴は、太陽系の巨大ガス惑星とタイタンでのみ見られるものである。CH4、H2O と水素分子 (H2) の衝突誘起吸収によって、グリーゼ229Bの近赤外線での色は短波長側が強くなっている。また可視光線の赤い波長でのスペクトルの傾きは急であり、L型矮星を特徴付ける FeH と CrH が欠けている。代わりに、アルカリ金属のナトリウムとカリウムに由来する非常に広い吸収の特徴の影響を受けている。これらの違いを受け、J. Davy Kirkpatrick はHバンドとKバンドにメタンの吸収が見られる天体に対してT型というスペクトル分類を提案した。 2013年時点で、355個のT型褐色矮星の存在が知られている。T型矮星の近赤外線での分類方法は、後に Adam Burgasser と Tom Geballe によって改良されている。理論的な研究では、L型矮星は非常に低質量の恒星と亜恒星天体 (褐色矮星) の両方が混在している一方、T型矮星のクラスは全てが褐色矮星で構成されていることが示唆されている。 T型矮星のスペクトルの緑色の部分でナトリウムとカリウムの吸収が起きているため、人間の視覚での実際の見た目は褐色ではなく、マゼンタに見えるだろうと推定される。WISE J031624.35+430709.1 (WISE 0316+4307) などのT型褐色矮星は、太陽から100光年以遠にわたる範囲で検出されている。
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