電磁特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:29 UTC 版)
二原子炭素中の電子は、構造原理に従って原子軌道の間で分配され、エネルギー準位に対応した固有の量子状態を生成する。最低エネルギー準位を持つ状態、すなわち基底状態は一重項状態(1Σ+g)であり、エテン-1,2-ジイリデンまたは二炭素(0•) と系統的に命名される。基底状態に比較的近いエネルギーの励起一重項状態や三重項状態が存在し、大気環境下では二炭素の試料に大きな割合を占めている。これらの励起状態のほとんどは光化学的緩和を受けると、電磁スペクトルの赤外領域で発光する。しかし、特に1つの状態が緑色に発光する。それは、エテン-μ,μ-ジイル-μ-イリデンまたは二炭素(2•) と系統的に命名される三重項状態(3Πg)である。加えて、基底状態からやや離れたエネルギーの励起状態があり、これは中紫外線照射下においてのみ二炭素の試料中で顕著な割合を占める。緩和すると、この励起状態は紫領域で蛍光を発し、青領域で燐光を発する。この状態も、エテン-μ,μ-ジイル-μ-イリデンまたは二炭素(2-) と命名され、一重項状態(1Πg)である。 状態励起エンタルピー(kJ mol−1)緩和遷移緩和波長緩和電磁領域X1Σ+g 0 – – – a3Πu 8.5 a3Πu→X1Σ+g 14.0 μm 長波長赤外 b3Σ−g 77.0 b3Σ−g→a3Πu 1.7 μm 短波長赤外 A1Πu 100.4 A1Πu→X1Σ+gA1Πu→b3Σ−g 1.2 μm5.1 μm 近赤外中波長赤外 B1Σ+g ? B1Σ+g→A1ΠuB1Σ+g→a3Πu ?? ?? c3Σ+u 159.3 c3Σ+u→b3Σ−gc3Σ+u→X1Σ+gc3Σ+u→B1Σ+g 1.5 μm751.0 nm? 短波長赤外近赤外? d3Πg 239.5 d3Πg→a3Πud3Πg→c3Σ+ud3Πg→A1Πu 518.0 nm1.5 μm860.0 nm 緑短波長赤外近赤外 C1Πg 409.9 C1Πg→A1ΠuC1Πg→a3ΠuC1Πg→c3Σ+u 386.6 nm298.0 nm477.4 nm 紫中紫外青 原子価結合法は、炭素がオクテット則を満たす唯一の方法は四重結合の形成であると予測する。しかし、分子軌道法は、σ結合中の2組の電子対(1つは結合性、1つは非結合性)と縮退したπ結合中の2組の電子対が軌道を形成することを示す。これを合わせると結合次数は2となり、2つの炭素原子の間に二重結合を持つC2分子が存在することを意味する。分子軌道ダイアグラムにおいて二原子炭素が、σ結合を形成せず2つのπ結合を持つことは驚くべきことである。ある分析では、代わりに四重結合が存在することが示唆されたが、その解釈については論争が起こった。結局、宮本らにより、常温下では四重結合であることが明らかになり、従来の実験結果は励起状態にあることが原因であると示された。 CASSCF(英語版)(完全活性空間自己無撞着場)計算は、分子軌道理論に基づいた四重結合も合理的であることを示している。
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