近親者との性行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 14:34 UTC 版)
人類学的には、インセスト・タブーは全人類普遍的であることが報告されている。また、イスラエルのキブツの研究、あるいは台湾のシンプアの研究から、例え兄弟でなくても幼い時期に社会的接触の多かった男女同士は、成長すると互いに距離をとるようになるため、彼らの間に恋愛感情は生まれにくいという事実が判明している(ウェスターマーク効果)。ただし親族をどのようなメカニズムによって避けているのかに関しては諸論があり、短期間の性行為が起こる可能性までは否定できないという意見もある。キブツを調査していたメルフォード・スパイロは、思春期に教育の影響で強く感情が抑圧されるとウェスターマーク効果のような現象が起こりうることを指摘している。 性的経験・性的虐待に関する調査結果においては近親姦の発生率も調べたものがあるが、それらは比較的高い発生率を示唆している。アメリカのキンゼイ報告では、近親者による性虐待を受けた経験がある女性は、全体の5.5%(うち実父・継父が1.0%)とされた。キンゼイ報告については保守的な時代に作られた報告書で、女性が性に対する調査に正直に回答すること自体が白眼視される時代であるため、アンケート対象が赤裸々な報告をする「特殊な層」に偏っている可能性があり、必然的に様々な質問に回答をするパーセンテージも高くなっている可能性もあるとの指摘もあった。フェミニストのダイアナ・ラッセルが1978年に行った、サンフランシスコの女性930人を対象にした調査では、18歳までに女性の16%が近親者による性虐待を報告しているとされる。また、社会学者デイビッド・フィンケラーが1978年に行った、大学生を対象にした調査によれば、男性の10%、女性の15%が兄弟姉妹との性的行為を体験しているなど、様々な調査報告がある。日本のデータはアメリカに比べると少ないが、五島勉の『近親相愛』(1972年)では、女性1229人中4.7%に近親姦あるいは未遂の関係があったと述べられている。 近親姦が必ずしも虐待的とは限らない可能性もあり、フィンケラーによる兄弟姉妹間の近親姦調査では、虐待的なのは4分の1程度だとされる。その行為が性的自尊心に対しどのような影響を与えるかに関しては、近親姦の体験年齢に左右される面があるとしている。9歳以降ならば性的自尊心は強くなることが多いが、9歳以下の場合、性的自尊心が低くなってしまうことが多い 。 アメリカでは1970年代に、近親愛を認めるべきという思想から、刑法典における近親相姦罪の規定の撤廃が訴えられたこともあったが、子供への性虐待の可能性に目が向けられたため、そのような発言は反発を受けていた。この問題は現在でもしばしば話題にされる。 「近親相姦」も参照
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