財政の安定性との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/29 23:23 UTC 版)
「基礎的財政収支」の記事における「財政の安定性との関係」の解説
「日本の財政関係資料 令和4年4月 財務省」の第21ページの記載によると、債務残高対GDP比には次の方程式が成立する。 (今期の債務残高対GDP比) = ((前期の債務残高)×(1+名目金利)+(今期のプライマリー・バランス赤字))/((前期のGDP)×(1+名目成長率)) ----- 1式 この1式に関して、財務省は次の事を述べている。 ● 金利(r) = 名目経済成長率(g) で、 PB赤字 = 0 であれば、 債務残高対GDP比は一定 そして、ここから財務省はさらに次の事を導出している。 ● 債務残高対GDP比の安定的な引下げのためには、 プライマリー・バランスの黒字化が必要 しかし、財務省が設定した1式を詳細に分析して財務省とは全く異なる結論を導いた論考「PB黒字化目標の欺瞞 高校数学で暴く財務省黒字化目標の欺瞞」が存在する。 その論考では1式における、(今期の債務残高対GDP比)をdnと置き、今期の債務残高をDnと置き、今期のGDPをYnと置く。そして、前期の債務残高をDn-1と置き、名目金利をiと置いた。 そして、今期のプライマリー・バランス赤字をSnと置き、前期のGDPをYn-1と置き、名目成長率をgと置いて、財務省が設定した1式を次の2式として記述している。 dn = Dn/Yn = (Dn-1 × (1+i) + Sn)/(Yn-1 × (1 + g)) ----- 2式 ここで、指数関数exp(a,x)をaのx乗を示す関数であると定義すると、2式をもとに論考「PB黒字化目標の欺瞞 高校数学で暴く財務省黒字化目標の欺瞞」では、次の3式を導出している。 dn = (d0 + s0/i) × exp(((1 + i)/(1 + g)),n) ー (s0/i) × exp((1/(1 + g)),n) ------ 3式 ただし、s0 = S0/Y0である。S0はSnを一定値として置いたものであり、Y0はn=0に相当する期のGDPである。 「PB黒字化目標の欺瞞 高校数学で暴く財務省黒字化目標の欺瞞」 では、3式におけるnが無限大とした場合のdnの極限値を求めている。 その結果、次のように結論付けている。ただし、i は名目金利であり、gは名目成長率であり、dnは今期の債務残高対GDP比であり、d0は第0期の債務残高対GDP比であり、s0は第0期のプライマリー・バランス対GDP比である。 i > g ならば、dnは発散 i = g ならば、dnはd0 + s0/i に収束 i < g ならば、dnは0に収束 上記は、次のことを示している。 プライマリー・バランスの黒字化をしても、金利が経済成長率よりも大きければ、債務残高対GDP比は大きくなり発散に向かうのであり、債務残高対GDP比の安定的な引下げにはならない。 債務残高対GDP比を安定的に引き下げるためには、経済成長率が金利よりも大きいことが必要であるし、経済成長率が金利よりも大きければ、プライマリーバランスが赤字でも黒字でも債務残高対GDP比は0に収束する。 プライマリー・バランス黒字化目標は、債務残高対GDP比の安定的な引き下げには無関係である。 また、下記のドーマー条件においても、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)は、財政の安定性には無関係であり、利子率と経済成長率だけが財政の安定性に関係するので、プライマリー・バランス黒字化目標は財政の安定化目標としては無意味であることが示されている。
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