薬剤抵抗性における役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 08:44 UTC 版)
近年の研究では、薬剤抵抗性がん細胞がこれまで無視されてきたオートクリンループから分裂促進シグナルを獲得し、腫瘍の再発を引き起こすことが報告されている。 例えば非小細胞肺癌(英語版)(NSCLC)では、EGFRやEGFファミリーのリガンドが広く発現しているにもかかわらず、ゲフィチニブなどのEGFR特異的チロシンキナーゼ阻害薬(英語版)は限定的な治療効果しか示さない。この抵抗性は、NSCLC細胞ではEGFRとは異なるオートクリン型成長シグナルが活性化されているためであると考えられている。遺伝子発現プロファイリング(英語版)によってNSCLC細胞株では特定の線維芽細胞増殖因子(FGF)やFGF受容体が存在していることが明らかにされ、ゲフィチニブ抵抗性NSCLC細胞株の一部ではFGF2、FGF9(英語版)とそれらの受容体が活発な成長因子オートクリンループを形成していることが判明した。 乳がんでは、タモキシフェン抵抗性の獲得は治療上の大きな問題となっている。ヒトの乳がん細胞では、タモキシフェンに応答してSTAT3のリン酸化とRANTES(英語版)の発現が増加することが示されている。近年の研究では、STAT3とRANTESは抗アポトーシスシグナルのアップレギュレーションとカスパーゼの切断の阻害によって、薬剤抵抗性の維持に寄与していることが示されている。こうしたSTAT3-RANTESのオートクリンシグナル機構は、タモキシフェン抵抗性腫瘍の患者の管理の新たな戦略となることが示唆される。
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