第一の本妻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/18 00:37 UTC 版)
60歳(夫である右衛門尉は40歳)。右衛門尉は若い頃、妻の実家が財産家というだけで結婚してしまったが、本来好色家であるため、現在では年長の妻を娶ったことを後悔している。髪の毛は真っ白、顔のしわは海の波のよう、歯は抜け落ち、乳房は牛のふぐりのように垂れている。それでも化粧をし、夫が見向きもしないことを恨んでいる。いい加減出家して尼にでもなればいいのに、いまだに夫に対して嫉妬し、毒蛇や悪鬼のようである。夫の愛を得るために、以下の神仏を信仰している。 聖天:大聖歓喜天のこと。夫婦和合の神とされた。 道祖神(さえのかみ、ふなどのかみ):本来村境にあって外敵や疫病を防ぐ神だが、男女関係・生殖をも司った。 野干坂の伊賀専の男祭(きつねざかのいがとうめのおまつり):野干坂は山城国愛宕郡松が崎村(現京都市左京区)の西から北岩倉に抜ける路。伊賀専は男女の仲を取り持つ神として祀られた老狐。その狐の、男に逢うための祭で、アワビ(女陰)を叩いて踊った。 稲荷山の阿小町の愛の法:伏見稲荷大社に祀られた稲荷明神の眷属となった狐に、男の愛を得るための祈りを、鰹節を陰茎の勃起したものに見立てて振り回し行った。 五条の道祖:京都五条にあった道祖神社。大火で焼失した後に、現在の松原道祖神社として復興。しとぎ餅(神に奉る餅)をささげた。 東寺の夜叉:東寺にあった金剛夜叉明王、聖天・吒吉尼天(荼吉尼天と同じ、だきにてん)・弁才天の三面六臂像。この神も恋愛を司るとされた。この神に雑炊をささげている。 以上のように、第一の本妻に対しては、好色な老女として厳しく批判されているが、その分生き生きとした描写になっている。
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