映画の製作現場における「男性のまなざし」
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「男性のまなざし」の記事における「映画の製作現場における「男性のまなざし」」の解説
映画という文化がもつ「男が女を眺める」という構造は、監督やプロデューサー、カメラマンなど映画製作にかかわる人々の大半が男性であることで制度的に支えられていると考えられてきた。 しかしMeToo運動が世界的に脚光を浴びると、男性偏重の製作環境を改めようという動きが加速し始め、「男性のまなざし」論はこの文脈で再注目されることになった。 製作現場では、まず映画関連団体によって映画の製作現場が圧倒的に男性に偏っていることを示すデータが相次いで分析・公開され、つづいてカンヌ国際映画祭など主要な映画祭・映画団体が女性監督の作品上映を後押しすることを宣言した。 また撮影現場でキスやセックスなど俳優同士が触れあうシーンを撮影するさい、俳優の身体が不必要にカメラに晒されないよう、監督らと俳優の意向を調整する「インティマシー・コーディネーター (Intimacy Coordinator) 」と呼ばれる職分が新たに設けられ、ハリウッドの俳優組合がその利用を奨励するようになった。 撮影手法では、これまでのハリウッド映画で女性の登場人物を撮影するさいに行われてきた慣行(女性の容姿を強調するためソフトフォーカスで撮る、脚や背中など露出の多い服を着せる、等)の見直しも行われるようになったほか、キャラクター設定でも女性を力のない弱い存在として描くことを意図的に退ける試みが始まった。リズ・ガーバス監督『ロストガールズ』(2020)やキャシー・ヤン監督『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)などがそうした新しい手法を取り入れた作品とされる。 とくにMeToo運動の大きなきっかけとなったワインスタイン事件を題材にとる映画『ジ・アシスタント』(2019)は、アメリカに残る男性主導の企業文化を、一貫して女性アシスタントの視点から描いてみせた。キティ・グリーン監督は、主人公の女性の容姿や身体を不必要に眺め回すショットを避け、彼女と同僚の女性たちが見つめるように撮ることをめざしたと説明しており、「男性のまなざし」をしりぞける作品と評されている。
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