捕虫器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 15:46 UTC 版)
ウツボカズラの捕虫器は、壺のような形で、いわゆる落とし穴式で虫を捕らえるようになっている。その形は種類によってさまざまである。 捕虫器は袋の形で、つるはその底面につながっている。上面には口があり、その上に蓋がついている。蓋は口を軽く覆うようになっており、背面側で袋の口に接続する。この蓋は袋の中に雨水などが入りにくくする役割を持っているもので、虫が入ると閉じる、などといったことはしない。しかしこの蓋の裏側の表面は虫は歩けるが適度に滑る様になっており、雨天時に避難してきた虫がこの蓋の裏にいると雨滴がこの蓋に当たった時に袋の中に落とす罠となっている事が最近分かっている。袋の外側の腹側、蓋のついた側の反対側には、二列のひれがついていることが多い。このヒレの間が、葉の表側である。 口の周囲は反り返り、ツルツルになって、虫が滑り落ちやすくなっている。種によっては、内側に下向きの返し刺が並ぶものもある。袋の中には底の方3割くらい、透明な液体が入っている。この液体はほとんど水であるが、消化液が含まれていて、ここに落ち込んだ昆虫は逃げ出そうとしても、ツルツルしている(蝋を塗ったような)袋の内側の壁に足を滑らせ、更に消化液を含む袋の内側の液体にも少しとろみがあるため、為す術もなく次第に消化され、袋の内側から吸収される。中にある水のようなものは虫を誘う蜜のようなものである。また、虫を誘うために蓋の裏側などに蜜腺をもつものもある。 捕虫器は、最初は葉の先端のつるの先の膨らみとして生じる。膨らみは次第に大きくなり、それにつれて基部で曲がって口を上に向け、袋の形になる。この時点では袋の口には蓋が密着しており、閉じているが、液はたまっており、やがて蓋が外れ、口の周囲が反り返って捕虫器が完成する。 袋の形は楕円形、ヒョウタン型、ラッパ状のものなど、種によってさまざまで、色も緑のものから、黄色味を帯びるもの、赤っぽくなるもの、表面にまだら模様があるものなどさまざまである。袋の口の部分が特に着色するものもある。また、種によっては蔓の低い位置から出るときと高い位置から出るときで袋の形が変わるものがある。地面近くの葉から生じる袋は、底が広い形で、高く伸びてから作る袋は、底が狭く、上が広がった形になるものが多い。特に有名なのは、N. amplaria で、茎の上の方につく袋は、下がすぼまったラッパ型だが、下につくものは、ほとんど球形と言ってよいほどに丸く、しかも、葉身がほとんどなくなって、ただ茎からツルが伸びてその先に袋をつけるような姿になる。茎の基部近くから芽が出た場合、多数の葉が集中して出て、そのような袋を茎の根本周辺の地表に並べるので、茎の根元は壷だらけになる。このような地表に乗っかって作られる袋のことを ground pitcher という。 なお、ウツボカズラの捕虫器は、実は葉の本体であり、実際の葉の本体に見えるのは、葉柄が広がって葉のようになったものだといわれる。葉脈が平行脈なのもそのためである。このようなものを偽葉 (phyllode) という。
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