投げ縄行動の由来
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/25 14:09 UTC 版)
このような特殊な習性が、どのようにして進化し得るものか、それを想像することは難しい。現在のところ、近縁の属のものの習性を比較することで、ある程度の見当が示されている。 トリノフンダマシ属のクモは、夜間に非常に目の粗い水平の円網を張る。この網の横糸は、かなり長く、たるんでいる。そして、虫が引っ掛かると、横糸は縦糸との接点のどちらかで切れ、ぶら下がる。クモは糸の先にぶら下がった虫を引き上げて捕らえる。この横糸は弾力性が強く、虫が暴れてもなかなかちぎれず虫に絡み付く。このクモの獲物もガが多いことが知られており、化学的擬態が疑われている。 ツノトリノフンダマシ属の網はトリノフンダマシの網の一部だけを残した形をしている。つまり、放射状に張られた縦糸は数本だけが長く、他は短く終わる。方向によって横糸数に大きな差があり、片寄った円網になる。横糸は獲物がかかると片方の端で切れて、クモは獲物を吊り上げる。 ツキジグモ属は、希少な1種のみからなる。その網は、縦糸に極端な長さの差があり、横糸は長い縦糸の間にだけ張られている。つまり、トリノフンダマシの網のうち、ある方向の扇型部分と、中心付近だけが残った形の三角形の網になっている。 つまり、円網から、次第に横糸が少なくなって行く一連の進化があると思われる。おそらく、化学的擬態でガを呼び集める能力と共に、網を簡略縮小していった結果、網は枠糸のみとなり、横糸を一本ぶら下げるだけの形になったものがナゲナワグモだと考えられる。また、そういった視点でナゲナワグモが餌とりの時に作る足場を見ると、円網の中心部と同じ構成になっていると言う。 同じコガネグモ科に属する中南米のカイラグモ属 Kaira spp. やオーストラリアの ナワナシナゲナワグモ属 Celaenia spp.などは、葉先に足場状に糸を組んでぶら下がり、前足を広げて待機し、ガがやってくるとその脚で捕まえる。これらのクモも、足場に組んでいる糸にフェロモン類似物質が含まれ、ガを誘引している。投げ縄さえ作らなくなったものもいるわけである。
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