感覚系伝導路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/16 03:35 UTC 版)
体性感覚性神経系には、触覚・固有覚(位置覚と振動覚)を伝える後索・内側毛帯路と、温痛覚(温度覚と痛覚)を伝える脊髄視床路の二つの伝導路がある。 どちらの伝導路も、感覚受容器から大脳皮質に情報が伝わるまでに3種類のニューロンがかかわっている。このニューロンを末梢から順に一次・二次・三次ニューロンという。一次ニューロンは脊髄後根神経節に細胞体があり、そこから末梢の感覚受容器と脊髄の両側に軸索を伸ばしている。 触覚・固有覚の経路(後索・内側毛帯路)では、一次ニューロンは脊髄に入ると同側の後索を上行する。第六胸髄以下のニューロンは後索の内側寄りにある薄束を通る。それより上のニューロンは後索の外側にある楔状束を通る。一次ニューロンは延髄に入るとそれぞれ薄束核、楔状束核と呼ばれる神経核でシナプスを形成しニューロンを交代する。二次ニューロンは延髄で交叉(左右のニューロンが入れ替わる)し、内側毛帯と呼ばれる束になってさらに上行して視床の後外側腹側核(VPL核)に入り、三次ニューロンとシナプスを形成する。三次ニューロンは視床から大脳の内包後脚を通り、頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野に至る。 温痛覚伝導路は、また異なった経路を通る。痛覚の一次ニューロンは脊髄に入ると1-2髄節上行または下行して後角膠様質でシナプスを形成する(この数髄節上行または下行する経路を後外側路あるいはリサウエル路という)。シナプス後の二次ニューロンは対側に交叉し、脊髄の前外側を視床まで上行する(前脊髄視床路が触覚を、外側脊髄視床路が温痛覚を伝える)。このため、脊髄視床路は前外側系とも呼ばれる。二次ニューロンは視床の後外側腹側核(VPL核)で三次ニューロンとシナプスを形成する。三次ニューロンは内包後脚を通って、頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野に投射する。 前外側系のニューロンは視床に投射するだけではなく、途中で脳幹網様体にも軸索が伸びている(脊髄網様体路)。この網様体からはさらに海馬(痛みの記憶を形成する)、視床の正中中心核(CM核、漠然とした痛みを感じる)など大脳や間脳のさまざまな場所に投射している。中脳中心灰白質(中脳水道周囲灰白質)にも二次ニューロンは投射しており、ここから延髄の大縫線核、さらに脊髄へと投射があって、痛覚信号の入力があるとそれを抑制する働き(負のフィードバック)を持つ。これによって痛み刺激が軽減される。
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