平等原則と適用領域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 22:22 UTC 版)
憲法第14条第1項の「法の下」という文言をめぐっては、かつて立法者非拘束説と立法者拘束説による議論があった。 立法者非拘束説(法適用平等説)「法の下」という文言は、法適用の平等のみを意味し、立法者を拘束しないとする説。 ドイツのヴァイマル憲法下の法理論で、平等原則による拘束は行政と司法にのみ及び立法者には及ばないとする学説を受けたものである。 ただし、日本の立法者非拘束説は、憲法第14条第1項の立法者拘束性を全く否定するものではなく、前段の一般的平等原則は法適用の平等を意味し、後段の人種・信条等による差別の禁止は立法者をも拘束すると解する。そして、後段の規定について限定列挙であるとして特に重要な意義を認め、後段列挙事由に基づく別異取扱いは絶対的に禁止されるとする。 立法者拘束説(法内容平等説)「法の下」という文言は、法内容も平等であることを意味し、立法者を拘束するとする説。 立法者非拘束説(法適用平等説)に対しては内容が不平等であれば平等に適用しても適正な結果は得られないという批判がある。ヴァイマル憲法下でも旧説(立法者非拘束説)への批判から立法者をも拘束するという新説が唱えられ、次第に有力となり、平等原則の立法者拘束性を肯定する学説がドイツでの通説となるに至っている。 日本の立法者非拘束説(法適用平等説)は平等原則自体は限定されるかわりに、平等を絶対的平等として一義的に捉えようとするものである。しかし、後段列挙事由以外の事由に基づく不平等取扱いを定める立法について憲法第14条違反の問題を生じないとすることになり必ずしも妥当でないと解されている。このようなことから立法者非拘束説をとる学説はほぼ見られず立法者拘束説(法内容平等説)が通説となっている。判例も憲法第14条第1項の規定が立法者を拘束することを当然の前提として判断している。
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