同所性心移植
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 20:21 UTC 版)
臨床の場において行われている心移植の98%以上が同所性心移植(Orthotopic heart transplantation)である。以下にその大まかな手順を述べる。 体外循環開始レシピエントに人工心肺を接続する手順は通常の開心術と概ね同様である。肺動脈カテーテルが入っていれば上大静脈まで引き抜く。この時、過去に胸骨正中切開を繰り返している患者では、人工心肺のカニューレ(送血管・脱血管)の挿入を大腿動脈・大腿静脈で行うことが多い。あるいは、遠位上行大動脈に送血管を入れ、上下大静脈に脱血管を挿入、締めて心臓を体循環から分離する。 補助人工心臓(VAD)装着状態からの移植の場合は、人工心肺開始と同時にVADの駆動を停止してVAD送血管を遮断する。 レシピエント心摘出ドナー心の手術室への到着を確認した後、大動脈を遮断する。VAD装着状態の場合はここでVADを切離、摘出する。大動脈と肺動脈をクランプ・切離した後、以下に述べる術式の違いにより、両心房、あるいは肺静脈を含む左房の一部を残してレシピエントの心臓を摘出する。 両心房法 両心房法またはLower-Shumway法(LS法)では、レシピエント側の左右心房の一部を残し、両心房を吻合する。心移植の歴史においては当初から30年以上用いられてきた基本的な術式である。 両大静脈法 両大静脈法(bicaval法)は、従来のLS法に手を加えた方法である。この方法では、レシピエント側に肺静脈を含む左房の一部が残され、上下大静脈と左房の吻合を行う。利点としては、僧帽弁輪の変形が少ない、僧帽弁逆流の可能性・重症度が低くなる、心房の同期的収縮が保たれる、右室機能が改善する、血栓のリスクが減少する、等がある。日本においてはbicaval法を更に改良したmodified bicaval法が最も広く行われている。 ドナー心吻合・体外循環離脱次にドナー心の吻合を行う。まずドナー心を観察して卵円孔が開存していたら閉鎖する。そしてドナーとレシピエントの左房、次に右房を、また両大静脈法を選択した場合は上下大静脈を吻合する。次に縫合する場所はドナー心の虚血時間などを考慮しながら決定する。ドナーとレシピエントの大動脈を吻合し、患者をトレンデレンブルグ位(英語版)にして空気塞栓を予防しながら、大動脈の遮断を解除する。肺動脈を吻合し、ペーシングワイヤーを縫着した後、心腔内を脱気して人工心肺から離脱する。
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