初動発震機構解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 05:57 UTC 版)
各観測点におけるP波の初動が「押し」であるか「引き」であるか(上下動の波形を見た場合、第一波が上向きであるか下向きであるか)を判別し、それぞれの観測点と震源の相対位置や速度構造を元に射出角と方位角を求め、球面に押し引きの分布を描画する。押しと引きの分布は球の中心を通る2つの直交する平面で分かつことができる。こうして2つの面を求めたものが初動発震機構解である。初動解は、断層面のみを求めるためのもので、地震の規模(気象庁マグニチュードMjなど)を求めるためには別の方法を用いる。 志田順らが1920年代にP波初動の四象限分布を発見してから、地震の断層面を決める有力な手がかりとして多くの地震の初動発震機構解が求められた。しかし、初動解を正確に求めるためには数十以上の観測点での明瞭なP波初動波形が必要であり、また解の精度は観測点分布にも大きく依存し、観測地域から遠いところの地震では求めるのが難しい。このことから特に日本の内陸や沿岸部の地震で多くの解が求められてきた経緯がある。 1970年代に長周期地震計や計算機環境が整備され、CMT解の計算手法が確立されると、規模の大きな地震の発震機構はCMT解で求められることのほうが多くなってきている。とくに規模の大きな地震は、P波初動が不明瞭な場合もままあるほか、初期破壊と主破壊のメカニズムが異なることから初動解からでは地震のメカニズムを正確に評価できないという事情もあり、CMT解が好まれる。しかしM2~4程度の地震は長周期の波の振幅が小さく、CMT解の計算が困難であることから、今も初動解の計算により発震機構が決められている。 ただ、高速化した現在の情報通信技術をバックボーンに、初動解により断層面を判別することで、地震発生後早い段階で海溝型・直下型・スラブ内といった地震の種類の判別が迅速にできるため、津波予報や防災に必要な情報として欠かすことができない解析手法の1つである。[要出典]
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