分析用超遠心機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/07 04:25 UTC 版)
分析用超遠心機では、回転している試料は紫外吸光や干渉光学系によってリアルタイムでモニターされる。これによって、遠心力場の印加に伴う回転軸に対する試料濃度プロファイルの変化を観察することができる。現代的な装置ではこれらはデジタル化されて保存され、さらなる数学的解析がなされる。沈降速度実験と沈降平衡実験という2種類の実験がこれらの装置を用いて一般的に行われる。 沈降速度実験では沈降の全時間経過が解釈され、溶解した高分子の形状とモル質量、ならびにそれらのサイズ分布が得られる。この手法によるサイズ分解能は粒子半径の2乗にほぼ比例し、ローターの速度を調節することによって、100 Daから 10 GDaまでのサイズ範囲をカバーすることができる。また沈降速度実験は、高分子複合体の数とモル質量のモニタリングや、各要素の分光的シグナルの差異を利用した多重シグナル分析による複合体組成についての情報、Gilbert-Jenkins理論で説明されているような高分子系の沈降速度の組成依存性などを利用することで、高分子間の可逆的な化学平衡の研究を行うことも可能である。 沈降平衡実験は、実験の最終的な定常状態を対象とする。定常状態では沈降は濃度勾配に対抗する拡散との平衡にあり、時間に依存しない濃度プロファイルが得られる。遠心力場における沈降平衡の分布はボルツマン分布によって特徴づけられる。この実験は高分子の形状の影響を受けず、高分子のモル質量と、化学的反応が起こる混合物では化学平衡定数が得られる。 分析超遠心解析から得られる情報には、高分子の全体形状、コンフォメーションの変化、高分子試料のサイズ分布が含まれる。タンパク質のような高分子は異なる非共有結合性の複合体間の化学平衡にあるため、複合体の数やサブユニットの量比や平衡定数が超遠心解析によって研究される。 現代的なコンピュータを用いた解析が容易になったこと、アメリカ国立衛生研究所のサポートを受けたソフトウェアパッケージであるSedFitが開発されたことによって、分析超遠心の利用は近年拡大している。
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