会社更生法を申請
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 01:10 UTC 版)
イセ食品は国内はもとより、アメリカやアジアにも進出して事業を拡大した他、国内事業においてもM&Aによって事業を拡大していき、2018年1月期は470億6000万円の売上があった。その一方で、関連会社へ資金融通や過大投資、元会長兼元社長の伊勢彦信が高額な美術品への資金を投下していた他、不適切な人員配置などでガバナンスが機能しておらず、生産性が著しく低下していた。イセ食品グループが所有している美術品の総額は約120億円に上るという。 しかし、業容拡大により金融債務が増加していき、追い打ちをかけるかのように、新型コロナウイルスの影響により外食産業の不振に伴い卵価が下落した他、飼料価格の上昇により業績や資金繰りが悪化。2020年1月期の売上も約468億円にまで落ち込んだ。金融機関からの融資を受けることが困難となり、ノンバンクに手を出すようになった。2020年3月に私的整理を申請した。取引金融機関約50行との間でバンクミーティングなどを行い、2021年3月末までに伊勢彦信の後継者を決めて事業承継することや、伊勢彦信への貸付金の弁済などが私的整理の枠組みに盛り込まれる事になり、2020年9月に全ての金融機関が同意し、2021年7月まで金融債務の返済が猶予される事になった。この時期から取引先の間でイセ食品に対する信用不安が広まり、2020年12月頃から帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関に対して問い合わせが相次いでいたという。 一方で、伊勢彦信はバンクミーティングによる合意には非協力的であり、美術品も所有形態を巡って金融機関との関係が悪化していった。2021年6月30日付で伊勢彦信が会長兼社長が退任し、後任の社長には田中保成が就任した。田中が社長に就任した後もバンクミーティング自体も難航していた他、金融債務の返済猶予期限を過ぎた2021年7月以降も、約定を履行できない状態に陥ることになった。2022年に入っても、ノンバンクからの借り入れが続いていた他、金融機関の同意を得ないままグループ会社の事業譲渡を実施した。 このため、株主であり、伊勢彦信の長男である伊勢俊太郎が代表を務めるISEホールディングスと債権者であるあおぞら銀行は、経営体制の抜本的な見直しが不可欠と考え、2022年3月11日にイセ食品と関連会社であるイセに対して会社更生手続を申し立て、同日付で東京地方裁判所から保全管理命令を受け、同年3月25日に東京地方裁判所から会社更生手続開始決定を受けた。関連会社である伊勢農場も経営者不在の状態であった事から、同日にイセ食品の管財人から会社更生手続を申し立てられ、同日付で東京地方裁判所から保全管理命令を受け、同年4月28日に会社更生手続開始決定を受けた。負債総額は3社合計で483億円。信用調査機関によれば、「伊勢彦信と伊勢俊太郎との間で経営をめぐる確執があったのではないか」と指摘している。 管財人によれば、金融機関との間で、DIPファイナンスに関する金銭消費貸借契約を締結済みであり、資金繰りには支障はないとしている。イセ食品は「営業はこれまで通り継続し、一般商取引債権に関しては裁判所の許可を得て、従前の取引条件での取引継続を条件に全額支払う予定である」とコメントしている他。すでにイセ食品の事業に興味を持った数社のスポンサー候補が現れているという。イセ食品、イセ、伊勢農場の3社以外の関連会社に対する会社更生手続の申立てに関しては現時点ではないという。 伊勢彦信元会長の弁護団は2022年4月18日に、イセの会社更生手続開始は不服として、東京地方裁判所に抗告を申し立てた。抗告期限が同日であったイセ食品の会社更生手続開始決定に関する抗告は見送った。これにより、イセ食品の会社更生手続開始決定は確定する事になった。 イセ食品とイセの会社更生手続を申し立てたISEホールディングスは、子会社(ISEホールディングス、イセデリカ、タマムラデリカ、i-エッグプラス)はイセ食品との資本関係は全くなく、通常通り事業を継続している。
※この「会社更生法を申請」の解説は、「イセ食品」の解説の一部です。
「会社更生法を申請」を含む「イセ食品」の記事については、「イセ食品」の概要を参照ください。
- 会社更生法を申請のページへのリンク