伊東信雄とは? わかりやすく解説

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伊東信雄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/08 01:39 UTC 版)

伊東 信雄(いとう のぶお、1908年明治41年)3月17日 - 1987年昭和62年)4月10日)は、日本の考古学者東北地方縄文弥生古墳時代古代中世近世史、樺太(サハリン)の先史時代研究に大きな業績を残した。東北大学名誉教授。

概要

1957年に東北大学考古学講座初代教授に就任した。東北地方の原始・古代文化を考古学的手法により解明し、「東北の考古学の父」と呼ばれた。伊東は、山内清男とともに東北の古い縄文土器の編年を確立し、特に青森県垂柳遺跡の発掘において、東北地方の稲作農耕を明らかにする研究を進めた。

戦前には、通説として「東北の古代文化は遅れていた」、「東北地方は鎌倉時代まで石器時代が続いた」とされていた。山内と伊東は、東北の石器時代の終了時期は西日本と同じであり、縄文時代の終末期に稲作が導入され、古墳時代においても庶民の生活は、近畿・関東と大差なかったと考えた。

伊東は、弥生時代特有の石包丁を再検討し、東北地域南部の福島県・宮城県で石包丁が多く分布していることを確認した。また、扁平片刃石斧、太形蛤刃(ふとがた はまぐりば)石斧、有角(ゆうかく)石斧等も、仙台市南小泉で採集された弥生土器と共伴するものと考え、これらの土器底には稲モミの圧痕があることを指摘し、稲作の存在を予測した。東北地域の北部については、青森県田舎館村から出土した壺、甕、高坏、蓋等が、形式的に中部地域・関東地域で発見される古手の弥生土器に類似することに注目し、東北地方には農耕経済の上に立つ弥生文化があることを主張した。

略歴

  • 1908年(明治41年)3月17日 - 宮城県仙台市袋町1番地に生まれる。
  • 1911年(明治44年) - 父の開業に伴い、北海道江別市に転居。
  • 1919年(大正8年) - 千葉県金谷村(現・富津市)に転住。
  • 1927年(昭和2年)から1929年(昭和4年) - 東北帝国大学医学部副手山内清男と知り合い、宮城県大木囲貝塚、槻木貝塚、千葉県上本郷貝塚、北海道函館市住吉町遺跡、宮城県室浜貝塚、福浦島貝塚、川下貝塚、高松貝塚などの発掘調査に参加する。
  • 1931年(昭和6年) - 仙台郷土研究会委員に委嘱。1933年(昭和8年)樺太史蹟名勝天然記念物調査会委員、1939年(昭和14年)宮城県史蹟名勝天然記念物調査会委員、1953年(昭和28年)宮城県文化財専門委員、1969年(昭和44年)宮城県多賀城跡調査研究指導委員会委員長をはじめ、多くの専門委員を歴任し、東北地方各地の調査組織や文化財保護の仕組みづくりに尽力した。

学歴

職歴

  • 1931年(昭和6年) - 東北帝国大学法文学部考古学参考品整理嘱託
  • 1932年(昭和7年) - 東北学院高等学部講師、考古学を担当
  • 1933年(昭和8年) - 第二高等学校講師
  • 1936年(昭和11年) - 東北帝国大学文学部講師
  • 1937年(昭和12年) - 第二高等学校教授
  • 1949年(昭和24年) - 東北大学助教授
  • 1957年(昭和32年) - 東北大学文学部考古学講座担当。主任教授就任
  • 1971年(昭和46年) - 東北大学を定年退職、名誉教授就任
  • 1972年(昭和47年) - 東北歯科大学教授(~1973年)
  • 1973年(昭和48年) - 東北学院大学教授(~1986年)

著作

  • 『古代東北発掘』学生社 1973
  • 『仙台郷土史の研究』宝文堂出版販売 1979

共編著・監修

  • 『新稿日本史』岡本堅次,佐藤直助共編 文理図書出版社 1955
  • 『古代の日本 第8 東北』高橋富雄共編 角川書店 1970
  • 『挂甲の系譜』末永雅雄共著 雄山閣出版 1979
  • 『会津の美 1 考古篇』監修 歴史春秋出版 1985

論文

  • 伊東信雄, 「東北古代文化の考古学的研究」 東北大学 博士論文, [報告番号不明], 1962年, Template:Naid/500000318468
  • 伊東信雄「古代東北地方の農業」『日本歴史』第22号、吉川弘文館、1950年1月、26-27頁、ISSN 03869164NAID 40003069314 
  • 伊東信雄「東北地方の弥生式文化」『文化』第2巻第4号、東北大学文学会、1950年10月、40-64頁、ISSN 0385-4841NAID 40003381589 
  • 伊東信雄「仙台市内の古代遺跡」『歴史』第2号、東北史学会、1950年11月、21-26頁、ISSN 03869172NAID 40003813884 
  • 伊東信雄「仙臺藩銀札發行灌漑顛末」『社会経済史学』第18巻第2号、社会経済史学会、1952年、191-208頁、doi:10.20624/sehs.18.2_191ISSN 0038-0113NAID 110001212411 
  • 伊東信雄「考古学上より見た古代の岩手県」『岩手史学研究』第10号、岩手史学会、1952年3月、4-11頁、ISSN 02899582NAID 40000146040 
  • 伊東信雄「有角石器の用途について」『考古学雑誌』第40巻第3号、日本考古学会、1955年1月、ISSN 00038075NAID 40001203908 
  • 伊東信雄「東北北部の弥生式土器」『文化』第24巻第1号、東北大学文学会、1960年4月、17-45頁、ISSN 0385-4841NAID 40003380860 
  • 伊東信雄「最近の古代宮殿跡発掘」『文化』第27巻第2号、東北大学文学会、1963年7月、ISSN 0385-4841NAID 40003380990 
  • 伊東信雄「山内博士東北縄文土器編年の成立過程 (大森貝塚発掘100年記念特集) -- (日本考古学一〇〇年によせて)」『考古学研究』第24巻第3号、考古学研究会、1977年12月、164-170頁、ISSN 03869148NAID 40001202671 
業績紹介など
  • 渡部綱次郎「伊東信雄・岡本堅次・佐藤直助共編「新稿日本史」」『秋大史学』第6号、秋田大学史学会、1955年6月、ISSN 0386894XNAID 40001726663 
  • 藤岡謙二郞「<紹介>伊東信雄著 宮城縣遠田郡不動堂村素山貝塚調査報告」『史林』第25巻第3号、史學?究會 (京都帝國大學文學部内)、1940年8月、459-460頁、doi:10.14989/shirin_25_459ISSN 0386-9369NAID 120006816030 

叙位・叙勲

追悼

  • 1989年『足跡 東北学院における伊東信雄先生』足跡編集会編
  • 1990年『伊東信雄先生追悼考古学古代史論攷』伊東信雄先生追悼論文集刊行会

評伝・回顧ほか

  • 芹沢長介1971「伊東信雄先生の学風と業績」『文化』35-1・2、東北大学文学会
  • 平山久夫1986「山内清男(続縄文)対伊東信雄(弥生)の論争点は決着したか」『北奥古代文化』17、北奥古代文化研究会
  • 佐々久1987「伊東信雄先生をおしむ」『仙台郷土研究』12-1 仙台郷土研究会
  • 氏家和典1987「伊東信雄先生を偲んで」『北奥古代文化』18、北奥古代文化研究会
  • 佐々木慶市1987「伊東さんと私」『国史談話会雑誌』28、東北大学国史談話会
  • 工藤雅樹1987「伊東信雄先生を偲んで」『国史談話会雑誌』28、東北大学国史談話会
  • 渡辺信夫1987「伊東信雄先生を悼む」『国史談話会雑誌』28、東北大学国史談話会
  • 村上啓一1987「伊東先輩を悼む」『国史談話会雑誌』28、東北大学国史談話会
  • 桜井清彦1989「考古学史を彩った人々 伊東信雄」『論争・学説日本の考古学』雄山閣出版
  • 芹沢長介2004「東北考古学の父 伊東信雄先生」『月刊考古学ジャーナル』523号、ニュー・サイエンス社
  • 東北大学総合学術博物館・東北歴史博物館2013『考古学からの挑戦-東北大学考古学研究の軌跡』東北大学総合学術博物館のすべてⅩⅢ
  • 志間泰治・相原淳一2016「歴史を掘り起こす」『宮城考古学』18、宮城県考古学会

脚注

  1. ^ 伊東信雄, 「東北古代文化の考古学的研究」 東北大学 博士論文, [報告番号不明], 1962年, NAID 500000318468



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