三分所有権システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/05 22:03 UTC 版)
「中華人民共和国物権法」の記事における「三分所有権システム」の解説
ソ連流の民法理論では所有主体のカテゴリー別に三種類の所有権を観念するという多元的所有権制度を特徴としていた。本法制定過程でも、議論の末、この特徴が維持され、国家所有権、集団所有権、私人所有権という三種類の所有権が規定された(第5章)。前二者がいわゆる社会主義的公有制を法的に裏付けるものであり、これが国民経済の主体に位置付けられる(第3条第1項)。ただし、法文では、この三種類の所有権の平等保護が唱われ(第3条第3項、第4条)、特に国家所有権に優越的な保護が与えられているわけでない。三つの所有権の違いは、所有の対象となる財産の種類にあり、都市部の土地、天然資源、森林、草原、野生動植物、国防・社会資本などの所有権は原則、国家にのみ帰属しうる(第46条から第52条)。農村部の土地は農民集団の所有に属すとした(第58条から第60条)。本法のもとでも法律上は、およそ土地について私的所有が成立余地はない。すなわち、ソ連流の三分所有権システムを墨守するものであり、この点ではソ連法の影響がなお続いているといえる。本法が「三分所有権システム」を維持した理由は以下である。第一に、社会主義経済システムのメルクマールを公有主体であることに求めていることから、何が公有に属するかを明確にしておく必要があると考えられている。第二に、農村の土地は基本的に農民集団の集団所有、それ以外の土地は国有とするという所有の客体に対する制限が依然として維持されており、その限りでは権利の種類が違うという論理も成り立つ。いかなる意味においても私人が土地の所有権を取得する可能性はなく、せいぜい用益物権に留まるのである。
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