ロレンツォのオイルの医学的効果
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「ロレンツォのオイル/命の詩」の記事における「ロレンツォのオイルの医学的効果」の解説
副腎白質ジストロフィー adrenoleukodysprophy(ALD)は、ロレンツォが発症した1982年当時治療方法がまったくなく、診断されてから多くは2年以内に死亡することが多かった。オドーネ夫妻が考案した「ロレンツォのオイル」はオレイン酸とエルカ酸の混合物で、ALDの病態である脱ミエリン化を起こす極長鎖脂肪酸(VLCFA)を低下させる一種の栄養療法である。 映画にあるように、血中VLCFA値の低下作用は明らかだったが、治療効果については当時より賛否両論だった。多くの患児の両親が「ロレンツォのオイル」を求めて争って投与したが、実際にはALD症状改善を認めることは少なかった。植物状態で死を待つだけだったロレンツォが「ロレンツォのオイル」によって劇的に改善し、両親との意志疎通さえも可能となる映画のラストが感動的だっただけに、逆に多くの両親の失望は大きかったといえる。映画公開の翌年である1993年に「ロレンツォのオイルは無効である」という論文が発表されており、さらにEditorialで「医学は映画のように簡単にはいかない」という痛烈な批判がなされたことが決定的だった。 映画の中で、両親の性急さをしばしば諌め、ALDの全患児に責任ある医師の立場として「ロレンツォのオイル」の臨床使用を断る、いわば「悪役」としてのニコラウス教授のモデルとなったのは、ALDの世界的な権威だったヒューゴ・モーザー(英語版)である。しかし実は、「ロレンツォのオイル」が無効と言われ、詐欺師やインチキとまで批判されたロレンツォの両親を、最後まで支持し擁護していたのがそのモーザー医師である。「オイル」の臨床試験を地道に続け、2005年に「ロレンツォのオイルはすでに症状が進行した患児には無効だが、血中VLCFA値が高値を示す児の発症予防や症状軽減には有効」という画期的な論文を出した。 現在では、スクリーニングによって発症前の患児を見つけ、早期から「ロレンツォのオイル」を投与して発症予防を行うというプログラムが、北米では進められている。
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