ホーフェルド図式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/06/10 18:03 UTC 版)
「ウェスリー・ホーフェルド」の記事における「ホーフェルド図式」の解説
ホーフェルドは、法的権利義務関係を「権利(claim)」、「特権(privilege)」、「権能(power)」、「免除権(immunity)」の四つの概念、およびそれぞれと対立関係ないし相関関係にある「無権利(no-right)」、「義務(duty)」、「無能力(disability)」、「責任(liability)」の四つの概念と組み合わせて、次のような図式を示した。 対立関係(法的対立項)-第1図式 権利 特権 権能 免除権 無権利 義務 無能力 責任 相関関係(法的相関項)-第2図式 権利 特権 権能 免除権 義務 無権利 責任 無能力 権利・義務・特権・無権利 第2図式第1列は、権利と義務の関係を表す。例えばXY間で売買契約が締結された時に、XはYから商品の引渡しを受ける権利を有し、YはXに商品を引き渡す義務を負う、というものである。すなわち、「XはYに対し、YがVすることへの権利を有する」と、「YはXに対しVする義務を負う」は、同一の法律関係を権利者の側から述べるか、義務者の側から述べるかの違いがあるのみである点で、互いに相関項(correlative)と把握される。権利の保持者がXの時、義務の保持者はYになる、というように、相関項のそれぞれの保持者は異なる人物となる。 一方、第2図式第2列は、特権と無権利の関係を指す。例えばXY間で売買契約が締結されていない時に、YはXに対して商品を引き渡さない特権を有し、XはYから商品の引渡しを受ける権利を有さない、というものである。ここでも、「YはXに対しVしない特権を有する」と、「XはYに対し、YがVすることへの権利を有さない(=無権利)」は、同一の法律関係を指す相関項である。 ここで第1図式第1列を見ると、権利と無権利は対立項(opposite)と把握される。これは「XはYに対し、YがVすることへの権利を有する」の否定が「XはYに対し、YがVすることへの権利を有さない」になっている、という意味である。第2図式と異なり、第1図式の対立項の保持者は同一人物である。 また第1図式第2列においては、特権と義務が対立項と把握される。これは「YはXに対しVしない特権を有する」の否定が「YはXに対しVする義務を負う」であり、「YはXに対しVする特権を有する」の否定が「YはXに対しVしない義務を負う」である、という意味である。特権とは「義務を負っていないこと」であり、いわば「無義務」と呼びうるものである。 権能・責任・免除権・無能力 第2図式第3列は、権能と責任の関係を指す。例えば物の所有者XがYにそれを譲渡する時に、XはYを所有者とする権能を有し、Yは物の所有者になる責任を負う、というものである。ここでも、「XはYに対し、Yの法律関係を変化させる権能を有する」と、「YはXに対し、Xによって法律関係を変化させられる責任を負う」は、同一の法状態を指す相関項である。 第2図式第4列は、免除権と無能力の関係を指す。例えば物の所有者Yと、所有者でないXがいる時に、YはXによって物の所有権を奪われない免除権を有し、XはYに対して物の所有権を奪う権能を有さない。ここでも、「YはXに対し、法律関係を変化させらない免除権を有する」と、「XはYに対し、Yの法律関係を変化させる権能を有さない(=無能力)」は、同一の法状態を指す相関項である。 ここで第1図式第3列を見ると、権能と無能力は対立項と把握される。これは「XはYに対し、Yの法律関係を変化させる権能を有する」の否定が「XはYに対し、Yの法律関係を変化させる権能を有さない」になっている、という意味である。 また第1図式第4列においては、免除権と責任が対立項と把握される。これは「YはXに対し、法律関係を変化させらない免除権を有する」の否定が「YはXに対し、Xによって法律関係を変化させられる責任を負う」である、という意味である。
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