デコヒーレンス
【英】decoherence
デコヒーレンスとは、量子力学において、「量子力学的重ね合わせ」と呼ばれる状態が外的要因によって破壊され、量子上の情報が失われる現象のことである。
量子コンピューターは、情報量の単位として「量子ビット」(キュービット)が用いられる。従来の情報(古典ビット)は1ビットで0と1のどちらかのみ示すことができるが、量子ビットは「量子力学的重ね合わせ」現象を利用して、0または1の情報を複数保持したまま並列に扱うことが可能とされる。このため、量子コンピュータが実現すればコンピュータの処理速度は飛躍的に向上するといわれている。
2012年現在、量子コンピュータはさまざな課題を残しており、いまだ実現されていない。その一つに、デコヒーレンスの発生によって量子ビットが失われ、情報が維持できない、という問題があり、研究開発が進められている。
参照リンク
IBM Research Advances Device Performance for Quantum Computing - (IBM News room)
量子デコヒーレンス
デコヒーレンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/06 08:53 UTC 版)
「イオントラップ型量子コンピュータ」の記事における「デコヒーレンス」の解説
相互接続されたトラップ内の領域間でイオンが輸送され、不均一な磁場にさらされると、量子デコヒーレンスが次の式の形で発生する可能性がある(→ゼーマン効果)。 これは、量子状態の相対位相を効果的に変更する。 上向き矢印と下向き矢印は、一般的な重ね合わせ量子ビット状態、この場合はイオンの基底状態と励起状態に対応する。 | ↑ ⟩ + | ↓ ⟩ ⟶ exp ( i α ) | ↑ ⟩ + | ↓ ⟩ {\displaystyle \left|\uparrow \right\rangle +\left|\downarrow \right\rangle \longrightarrow \exp(i\alpha )\left|\uparrow \right\rangle +\left|\downarrow \right\rangle } 加算された相対位相は、トラップの物理的な動きまたは意図しない電界の存在から発生する可能性がある。 ユーザがパラメータαを決定できる場合、相対位相を補正するための既知の量子情報処理が存在するため、このデコヒーレンスの処理は比較的簡単である 。しかし、磁場との相互作用によるαは経路に依存するため、問題は非常に複雑である。 相対位相のデコヒーレンスをイオントラップに導入できる複数の方法を考えると、デコヒーレンスを最小化する新しい基準でイオン状態を再考することは、問題を排除する一つの方法である可能性がある。 デコヒーレンスに対抗する一つの方法は、量子状態を | ↑↓ ⟩ {\displaystyle \left|\uparrow \downarrow \right\rangle } および | ↓↑ ⟩ {\displaystyle \left|\downarrow \uparrow \right\rangle } を基底状態として使用するデコヒーレンスフリー部分空間(DFS)を用いて表現することである。 DFSは実際には2つのイオン状態の部分空間であり、両方のイオンが同じ相対位相を取得する場合、DFS内の全体の量子状態は影響を受けない。
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