スプリングステークス
スプリングステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 00:26 UTC 版)
「マティリアル」の記事における「スプリングステークス」の解説
3月29日、クラシック三冠初戦・皐月賞に向けて、スプリングステークスに出走。メリーナイス、ゴールドシチーという前年の東西3歳王者、重賞・きさらぎ賞を含み連勝中のトチノルーラー、2戦2勝のモガミヤシマらが顔を揃えたが、マティリアルは1番人気の支持を受けた。 それまでのマティリアルは先行あるいは中団からレースを進めていたが、岡部はレース前半のペースが速くなるという予測、また脚質に幅をもたせるために後方に控える作戦をとった。向正面では11番手から4馬身離れた最後方を進むと、第3コーナーから進出をはじめ、コース内側をついての9番手で最後の直線に入った。残り200メートルで7番手という位置で、テレビ中継で実況アナウンスを担当していた大川和彦はこの時点で「マティリアルはまだ中団、マティリアルはまだ中団、ぐーんと突っ込んでくるがちょっと届きそうにない」と伝えた。残り100メートルで大川はマティリアルから目を切ったというが、先行勢の競り合いからバナレットが抜け出した直後、外からマティリアルがこれを一気に差しきり、アタマ差先着して勝利した。走破タイム1分49秒3はレースレコードであった。 岡部がシンボリルドルフに騎乗していたころ、ルドルフの1歳上に鋭い追い込み脚質で知られたミスターシービーがおり、岡部はそのスタイルに対して「あれでは現代競馬は勝てない」と批判的であった。それを踏まえ、競走を終えて関係者の前に戻った岡部は、「ミスターシービーしちゃった」と漏らし、照れ笑いを浮かべた。競走後のインタビューにおいては「直線向いたところではさすがにちょっと間に合いそうにないと感じたので、直線でどれくらい差をつめられるか見てみようというぐらいのつもりだったんですけど、エンジンがかかってからの脚はすごかったですね」と語り、また田中は「ご覧のとおりのレースぶり。私がレースを見て感じたことは、皆さんが感じたこととたぶん同じだと思いますよ」と語った。2着バナレットに騎乗していた増沢末夫は「直線では勝ったと思ったのにね。何が差してきたのかわからなかった。風みたいにスーッと来られて……勝った馬と自分の馬では、ついているエンジンが違ったということでしょう」と語った。 当年のクラシック戦線は確固とした中心馬がおらず混戦と見られていたが、このスプリングステークスの後はマティリアルが中心との見方が大勢となった。しかし岡部は後に「馬の反応が鈍かったから、あんなレースになってしまった」、「どの馬も目標にし、万全に仕上げ、全力で走るクラシックを制するためには、どんな展開になっても素早く反応する能力が要求される。だから、大騒ぎされて、内心はやばいなあ、と思っていたんです」と当時の心境を吐露している。
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