グスタフ・ラートブルフ
グスタフ・ラートブルフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 15:51 UTC 版)
法実証主義者であったラートブルフが自然法への回帰を図ったのは、ナチス・ドイツの敗北という深刻な政治的状況下においてであった。そこで問題になったのは戦中に合法であった非人道的行為に対する遡及的に処罰可能性である。行為時に合法であった行為を事後的に違法とし処罰することは、刑法上の罪刑法定主義に違反する。このため、行為時に一見すると合法的であった行為、すなわち当時の制定法に鑑みれば合法的であった行為から、合法性を剥奪する必要が生じた。そこで用いられたのが、該当行為に合法性を与える制定法そのものを自然法によって覆すという手法である。 ラートブルフによれば、自然法の内容とは、正義の理念である。この理念を最初から追求しないような制定法は、無効とされねばならない。法的安定性も確かに法理念の一部であるが、著しい不正においては正義に劣後する。そして、正義の具体的な内容は、デモクラシーの維持と人間の尊厳の尊重にある。 このような再生自然法論は、その思想的背景であった戦後処理問題が終結するとともに、多くの批判を受けたが、純粋な法実証主義に戻ることも憚られた。以後、法実証主義との折衷的な道が模索されるようになる。そのような流れに位置付けられる法学者として、ヘルムート・コーイングやアルトゥール・カウフマンなどがいる。
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